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中国車が日本でブランド力を持つ日がやって来るのか?

BYDがジャパンモビリティショーで見せた本気

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中国車が日本でブランド力を持つ日がやって来るのか?
今年、BYD Auto(比亜迪汽車)が日本市場に投入したATTO3(アットスリー)。

自動車業界における今年最も大きな出来事の1つは、日本最大の自動車ショーが4年ぶりに帰ってきたことだろう。「モビリティ = 移動」を軸に幅広い産業で盛り上げようという考えで、今回から「ジャパンモビリティショー(JMS)」と改名された。新しくなった今回のショーで感じたのは、中国の自動車メーカーBYDの本気だった。

やはりBEVが目立った“モビリティショー”

11月5日の閉幕までの来場者数は、111万2000人だったことが主催者である自動車工業会(自工会)から発表された。航空機や電動自転車など幅広い「モビリティ」関連企業が参加したイベントとして、目標の100万人は超えた。

東京モーターショーがジャパンモビリティショーと改名し4年ぶりに復活した。

そんなJMSで、話題の中心はやはりバッテリーEV(BEV)だった。部品メーカーやスタートアップ企業も含め、各社の展示は電動車とその関連テクノロジーが主役だった印象が強い。その中で、既に量産されている多くのBEVを展示して目を引いたのがBYDのブースだった。国産メーカーもBEVを出展していたが、多くがコンセプトカーだったのとは対照的だ。

コンセプトEVの多い日系メーカーとは異なり量産EVを並べたBYDのブース。(画像提供:BYD Auto Japan)

勢いを感じたBYD

BYD(比亜迪)は1995年に中国の深圳でバッテリーメーカーとして誕生した。2003年には傘下の自動車メーカー西安泰川汽車が経営不振に陥り、BYD Auto(比亜迪汽車)として新たなスタートを切った。2008年にはプラグインハイブリッド(PHEV)の量産を世界で初めて開始。現在はBEVとPHEVに加えて、バスやモノレールなど幅広く電動モビリティを手掛けている。日本ではBYDジャパンを通して2015年から電動バスの納入を始めており、全国の路線などで活用されている。

JMSに出展したのは、昨年7月に設立された乗用車部門のBYD Auto Japan。今年2月から日本での販売を開始した電動SUVの「ATTO3(アットスリー)」と、9月に発売したコンパクトEV「DOLPHIN(ドルフィン)」を展示した。10月25日に行われたプレスコンファレンスでは、3車種目となる中型セダン「SEAL(シール)」の日本市場投入が発表された。さらに高級車ブランド「DENZA(デンツァ)」のミニバン「D9」と、「YangWang(ヤンワン)」ブランドの「U8」SUVも出品。量産EVと関連技術が展示されたBYDブースは、国産メーカーとそん色のない規模だった。

日本市場にはATTO3、DOLPHIN、SEALの3車種を投入。

独自のバッテリーを搭載するBYDのBEV

電池メーカーとして出発したBYDらしく、同社のBEVは搭載するバッテリーに特徴がある。電気自動車が使用するバッテリーは、複数のセルをつなげてモジュール化しパックに収められているものが多い。

ニッサンLEAFに搭載されているモジュールバッテリー。

これに対しBYDの「ブレードバッテリー」は、blade(刃)状の長くて薄いセルを、モジュール化せずにそのままバッテリーパック内に組み込む“Cell-to-Pack”(CTP)と呼ぶ方式を採っておりスペース効率に優れる。

整然と並ぶ「ブレード」状のセル。モジュール方式よりもスペース効率に優れる。

もう1つの特徴は、正極にリン酸鉄リチウムを使用していることだ。現在多くの電動車両が搭載しているのは、「三元系」リチウムイオン電池。ニッケル、マンガン、コバルトの三元素を使用するため、こう呼ばれる。エネルギー密度が高いメリットがある一方で、発火のリスクがあることや、レアメタルの使用によるコスト高が弱点とされる。

これに対してリン酸鉄リチウムイオン電池には、低コストに加え熱安定性の高さや寿命の長さといった利点がある。デメリットとしては、三元系に比べてエネルギー密度が低く、同じ容量を確保するためには一般的に大型化することだ。

BYDのブレードバッテリーは、モジュールを排してクルマへの積載効率を向上させた。その結果、より多くのセルを搭載することが可能となり、この課題を解消している。

バッテリー搭載のスペース効率に優れるBYDの「e-Platform 3.0」。

なお、CATLなどもCTP構造のリチウムイオン電池を生産している。同社は昨年6月に、第3世代となる「麒麟(キリン)」を発表。「体積利用率72%」と、スペース効率の良さを売りの1つにしている。

中国勢はCTPのBEV用バッテリーにメリットを見出しているようだ。

“Cell to Pack”から“Cell to Body”へ

BYDが日本で販売しているアットスリーやドルフィンは、このバッテリーパックを下からクルマのフロアに直付けしている。日本で来年6月頃に発売予定のシールでは、これが“Cell-to-Body”(CTB)構造に進化する。BYD Auto Japanの東福寺厚樹代表取締役社長によれば、「バッテリーパックの一部、上蓋にあたる部分がフロアと一体化してボディ構造の一部も担う形になっています。軽量化や車体剛性の向上につながります」とのことだ。BYDによると、モジュール構造のバッテリーパックと比較してCTBでは空間効率を50%改善している。

空間効率を50%改善できるというCTB構造。(画像提供:BYD Auto Japan)

8 in 1電動パワートレイン

BYDのBEVでもう1つ特徴的なのは、パワートレインの主要コンポーネンツを統合したことだ。モーターとトランスミッションに加え、バッテリーマネージメントシステム、オンボードチャージャー、高圧配電モジュール、DC–DCコンバーター、モーターコントロールユニットおよび車両コントロールユニットがワンパッケージに収められている。

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