CVTがモーターを救う:ボッシュ・CVT4EVのテクノロジー
モーターは万能、という誤解が生じていそうにも思える昨今の風潮の中、案の定効率をさらに追求する試みが現れた。用いるのはCVT、日本のお家芸である。提案するのはボッシュ。きわめて理知的なその構造をご紹介しよう。
TEXT:安藤 眞(Makoto ANDO) FIGURE:BOSCH
電気モーターのエネルギー変換効率は、内燃機関のそれよりはるかに高い。量産ガソリンエンジンの最高値が41%前後であるのに対し、電気モーターは95%以上を達成している。
とはいえ、全域で95%を超えているわけではなく、低回転高トルク領域になるほど銅損(銅線の電気抵抗による損失)が増え、高回転低トルク域になるほど鉄損(鉄芯の磁界を切り替える際に生じる損失)が増える。その分布を“トルク̶回転数線図”にマッピングすると、内燃機関の等燃費線図と同様の“等効率線図”が描ける。ということは、内燃機関と同様、なるべく効率の高い領域で使用したほうが、電費は良くなり、航続距離も伸ばせる。それに必要となるのが、減速比可変式のトランスミッションだ。
ところが、現在、市販されている多くのBEVには、減速比可変式のトランスミッションは付いていない。電気モーターは低回転ほどトルクが高いため、減速してトルクを高めなくても発進できるし、効率が低下するといっても80%程度は維持できており、高回転域でも内燃機関ほど振動騒音が大きくなることはないので、必要性そのものが低いからだ。
とはいえ、変速機の採用で高効率領域が多用できるようになれば、BEVの課題とされている航続距離は伸ばせるはず。事実、複数のトランスミッションメーカーが、BEV用変速装置の開発に取り組み、コンベンション等に出展している。
とくに興味深いのが、ベルト式CVTをベースに開発を進めているBOSCHだ。すでに内燃機関向けCVTの量産実績がある国産メーカーが遊星歯車を利用した2段変速を開発しているのに対し、CVT普及率の低い欧州のBOSCHが、なぜCVTなのか。