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深刻化する自動車整備士不足、問題解決の鍵は新しい技能取得の場と教育体制の構築

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深刻化する自動車整備士不足、問題解決の鍵は新しい技能取得の場と教育体制の構築

他の業界と比較しても非常に巨大な市場規模を持つ自動車業界。当業界は「自動車生産系」「自動車流通系」「アフターマーケット系」と大きく3つの事業に大分される。

自動運転やEV化など、注目を集める業界ではあるものの、深刻な問題を抱えている。

それが、近い将来直面するであろう自動車整備士不足だ。この深刻な人材不足は、自動車産業全体の成長を阻害するだけでなく、社会インフラの維持にも悪影響を及ぼす可能性が高い。

ガソリン車と比べ、EVなど高度な技術を搭載した自動車を整備するには、従来とは異なる専門知識と技術が必要不可欠だ。

ガソリン車のバッテリー電圧は12Vまたは24Vで、乗用車は12V、トラックやバスなどの大型車は24V。一方、EVに搭載されているバッテリーの電圧は300V~400V程度が主流だ。

バッテリーとモータの容量は走行距離を伸ばすためにも、今後さらに高電圧化、大容量化するだろう。現在、EVを整備するために必要な特別な国家資格はなく、ガソリン車と同じ整備士の国家資格を取得していれば問題ない。

しかし、お伝えした通りEVに搭載されているバッテリーはガソリン車よりも電圧が高いため、必要な知識と技術が足りてなければ感電で即死する恐れもある。またEVの火災は消火が難しく、発火にも慎重な対処が欠かせない。

世界的に見ても整備士不足は問題視されており、対応が求められている。

若年層が減少し高齢化が進む整備士。整備工場で年々加速する人手不足

自動車整備士を目指す若年層が減少している。その一方、自動車整備士の平均年齢が年々上昇しており、整備士の高齢化が進む。

国家資格を保有する自動車整備士は2012年度で約34万6千人。それから10年後の2022年では約33万4千人と、約1万2千人減少している。

対して整備工場数はどうか。年度毎に多少の上下はあるものの、ほぼ横這いで推移している。このことから、整備士不足に悩む整備工場が増加していることが分かる。

人手不足の深刻さが顕著に現れているのが有効求人倍率。これは公共職業安定所に登録されている仕事の数に対する、就労希望者の数を表している。有効求人倍率が1より大きければ「働き手よりも企業側の求人数が多い状態」ということだ。

2022年度の全産業の有効求人倍率は1.31倍だが、自動車整備士の有効求人倍率は5.02倍。全産業の約4倍という非常に高い数値で、企業の求人枠に対して働き手が大きく不足している状態だ。

ちなみに2012年度の自動車整備士の有効求人倍率は1.07倍だったので、10年間で約5倍に跳ね上がったことになる。

自動車はインフラの一種である以上、人手不足は非常に深刻な問題と言える。整備士が不足すると自動車産業そのものに悪影響を及ぼし、結果として物流などにも大きな影響を与えてしまうだろう。

世界的にも問題視されている自動車整備士不足

自動車整備士の不足は日本に限ったことではない。世界的にも問題視されており、対応が求められている。

新エネルギー車整備士学科を開設し、自動車業界に必要な人材を送り込む中国

中国工業・情報化部(省)が発表した「製造業人材発展計画ガイド」によると、2025年までに省(新)エネルギー車関連の人材が120万人に達すると見込んでいる。しかしその内、新エネルギー車整備士に関しては必要とされる数の2割にしか達しないと予想されている。

こうした現状を背景に、多くの院・校が、新エネルギー車整備士学科を開設。自動車業界に必要な人材を送りこもうと取り組んでいる最中だ。

中国は世界的に見てもEV普及率が高いことから、整備士不足の解消は急務と言えるだろう。

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