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マツダ直列6気筒第二弾:SKYACTIV-G 3.3とはどのようなエンジンか

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マツダ直列6気筒第二弾:SKYACTIV-G 3.3とはどのようなエンジンか

マツダの縦置きラージ商品群向けには、新設計の直6ディーゼルエンジンがまず先行して発表されていたが、2023年後半に北米、オーストラリア市場向けに投入される予定の直6ガソリンターボの情報が2023年5月にようやく公開された。畑村耕一博士に現在発表されている情報をもとに、このエンジンの特徴を解説してもらおう。

TEXT:畑村耕一(Koichi HATAMURA) FIGURE:Mazda

開発の狙いと採用技術

『モーターファン・イラストレーテッド』vol.194に掲載した連載「博士のエンジン手帖」でSKYACTIV-D 3.3について詳しく紹介し、SKYACTIV-G 3.3への期待を書いた。いつ発表されるか楽しみにしていると、2023年5月に開催された自動車技術会の春期大会でマツダから論文発表があった。まだ試乗できる段階ではないので論文に書かれた内容から、そのエンジン技術について紹介する。

一言で言うと何の変哲もない普通の直列6気筒エンジンだ。マツダらしい新技術の採用は一切なく、直列6気筒エンジンであることが最大の売りなのだろう。「直6」というだけでそれ以上の小さな技術を取り上げて主張する必要はないということだ。あえて特徴を挙げるとしても、①3.0Lではなく3.3Lという大排気量、②ディーゼルエンジンとの徹底した共通化の2点くらいだ。

最初に論文に出てくるのが、理想のエンジンに近づくためのロードマップ。ガソリン過給エンジン第1ステップが2.5T、第2ステップがSKYACTIV-Xで、3.3Tはその間に置かれている。ディーゼルは第2ステップに相当し冷却損失の進化を残すだけまでに進化したが、ガソリンは第1.5ステップに後退している。参考までに、2.5Gの気筒停止仕様のエンジンもマツダは第1.5ステップに位置づけている。

HCCI燃焼を世界で初めて実用化したSKYACTIV-Xは画期的な技術だが、燃焼騒音対策のためにカプセルエンジンにするなど高コストが避けられなかった。その割に熱効率の高い運転が低負荷の狭い領域に限定されてしまい、クルマとしての燃費向上効果が期待ほどに得られなかったことからの反省だろう。

SKYACTIV-Xは欧州の2020年のCO2規制対応として燃費が非常に重要だったが、北米中心のこのエンジンは狙いが異なる。北米の主力として大量販売が運命づけられたエンジンであることを考えると冒険を避けたのも納得できる。

3.3TはSKYACTIV-Xの後継ということで次世代リーンバーン燃焼を期待していたが、目新しい技術の採用はなく、他社も採用している技術をマツダ風に組み合わせたものになっている。マツダでは進化のロードマップで1.5ステップに位置づけており、進みすぎていた第2ステップ(SKYACTIV-X)の進化ではなく、普通に戻ったというのが適切だ。まだ燃費性能は公表されていないが、直6ディーゼルで驚いたような飛び抜けた燃費は期待できそうにない。が、大排気量の余裕ある走りを体感できるはずなので試乗するのが楽しみである。

直6ガソリンターボの技術コンセプト
出力、排ガス、燃費向上のための主要技術を示す。2.5Tとの比較だが、排気量増加のおかげで余裕を持って低速から高速まで高トルクを発生する。タンブル強化のSI燃焼で熱効率を向上、8ATとマイルドハイブリッドの採用でさらに燃費を向上した。同じトルクでも負荷(BMEP)が低いことからNOx排出量も抑えられる。
著者
畑村耕一

1975年、東京工業大学修士課程修了、東洋工業(現マツダ)入社。ディーゼルエンジン、パワートレインの振動騒音解析、ミラーサイクルエンジンの量産化、ガソリンエンジンの排ガス対策開発などを手がける。2001年にマツダを退職、自動車関連企業の技術指導を行いながら2002年に畑村エンジン研究事務所設立。2007年からはNEDOの委託研究、助成事業で千葉大学とHCCIの共同研究を実施した。

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