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世界最強の実用エンジンを仕立てる:ホンダ・スーパーカブのエンジン

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世界最強の実用エンジンを仕立てる:ホンダ・スーパーカブのエンジン
JA59E型

2022年にフルモデルチェンジを果たしたスーパーカブ110のエンジンは、出力同等/トルクは微増、燃費性能は向上。さらにユーロ5/令和2年規制に適合する。世界中で愛用される究極の実用エンジンについて、設計者に詳細を訊いた。
TEXT:MFi FIGURE:Honda

先代の110ccモデル・EEBJ-JA10型が登場したのが2012年2月のこと。それから10年後の2022年3月、8BJ-JA60型スーパーカブ110に搭載されたエンジンが刷新される。JA59E型と称する新エンジンの狙いは最新の排出ガス規制への対応。ユーロ5/令和2年規制に適合するための技術が盛り込まれた。

ユーロ5では車両診断のためのOBD IIのカプラー装着が義務付けられ、そこにおいて失火検知および触媒劣化検知が求められる。JA59Eの開発にあたってはまず、この失火をゼロにすることが目標のひとつに定められた。具体的な策としては、カムプロファイルの選定と吸気系のレイアウトの見直しである。吸気管長やポート形状はスムースなガス流動を期待する設計とし、インジェクターはウォールウェットを極力避ける位置に変更した。また、オーバーラップは極力減らし生ガスの流出を最小限化、ポート内で安定した混合気を生成するコンセプトである。急速燃焼とすれば熱効率は向上するが、そうするとクランクダウンと呼ばれる燃焼時に生じる金属系の接触音が起きてしまう。これが一部の海外市場からは嫌われていたことから、出力とNVHをバランスさせるとともに、クランクベアリングの容量増加やクランク自体の剛性向上などでこれに対処している。圧縮比を上げていることからブロックやシリンダーヘッドは強度を高める設計としたが、むしろ重量は下がっているという。

写真は先代のJA10E型。JA59E型・新エンジンの開発にあたっては、失火ゼロをコンセプトに、109ccの排気量は同じながら小径ボアのロングストローク設計となった。失火検知はクランク横のクランクパルサーが角速度変動で失火を検知する仕組み。圧縮比は上がったがスターターはスリムで軽量なものが備わっている。
著者
Motor Fan illustrated

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