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これがいわゆる「ドライカーボン」である:熱硬化性CFRPの製造方法(その1)

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これがいわゆる「ドライカーボン」である:熱硬化性CFRPの製造方法(その1)

炭素繊維は非常に細く丈夫だが、単独では形状を保つことができない。繊維同士を結合させ、さらに任意の形状に成形するためには樹脂の助けを借りて硬化させる必要がある。3000°Cで焼かれた炭素繊維は、成形段階でふたたび加熱される。

TEXT:牧野茂雄(Shigeo MAKINO) PHOTO&ILLUSTRATION:瀬谷正弘(Masahiro SEYA)/牧野茂雄(Shigeo MAKINO)/萬澤琴美(Kotomi MANZAWA)

オートクレーブとは「圧力釜」である。料理用具でも同じ名前で販売されている。熱硬化性樹脂と組み合わされた炭素繊維(プリプレグ)を硬化するには「加熱」が必要であり、その作業がオートクレーブ内で行なわれる。

単純に熱硬化性CFRPをつくるのであれば、バキュームバッギングという方法がある。気密性の高いジップロックのようなバッグでプリプレグを包み、その中の空気を抜きながら大気圧下で温める方法だ。バッグに包んで内部の空気を抜く(真空引き)こと自体はオートクレーブでも必須である。高強度・高精度が求められる場合はオートクレーブに材料を入れ、4〜6気圧程度での加圧を行なう。

通常、CFRP用のオートクレーブは10気圧程度まで加圧できるタイプが多い。どれくらいの圧にするかは、製造するCFRPによって違う。たとえば、CF織物でアルミハニカムをサンドイッチしたような構造の場合は、あまり圧力をかけすぎると加圧中にハニカムがつぶれてしまう。レーシングカー用のアルミハニカム・サンドイッチ材では3気圧程度が目安である。

まさに圧力容器というつくり。扉側と本体側にロック機構が付いている。扉を支えるヒンジ部分も丈夫そのもの。当然、こうした構造だから重量は重く、大型オートクレーブの設置には床面の基礎工事が必須だ。大型のオートクレーブでは、このように台車に載せた状態で素材の出し入れができるよう、レールが敷かれている場合が多い。ちなみに、航空機部品の場合、大型炉で「1回にひとつ」が原則。
著者
牧野 茂雄
テクニカルライター

1958年東京生まれ。新聞記者、雑誌編集長を経てフリーに。技術解説から企業経営、行政まで幅広く自動車産業界を取材してきた。中国やシンガポールなどの海外媒体にも寄稿。オーディオ誌「ステレオ時代」主筆としとてオーディオ・音楽関係の執筆にも携わる。

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