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モーターはなぜ、もてはやされるのか......

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モーターはなぜ、もてはやされるのか......
(PHOTO:Mercedes-Benz)

内燃エンジンと電気モーターを比べると、その「力の出し方」には明らかな差がある。この差が、自動車という重量物を走らせるうえでのエンジンの弱点だ。この弱点を補ってくれるのが、エンジンとは性格が真逆の電気モーターなのである。
TEXT&FIGURE:牧野茂雄(Shigeo MAKINO)

緑線のグラフは最大トルク200Nmの誘導(インダクション)モーターのトルク特性。世の中では「回転が立ち上がった瞬間に最大トルクを発揮する」と言われるが、実際には少々の回転上昇が必要。最大トルクは2000rpmを過ぎたあたりで落ち始め4000rpmでは半分まで落ちる。パーセンテージの数字は効率。
いっぽうで、赤線のグラフが縦軸の単位はBMEP(正味平均有効圧=ピストンを押し下げる平均圧力)で、この数値が20.0の自然吸気ガソリンエンジンの例。誘導モーターとは正反対で4000rpmを過ぎないと最大トルクに到達しない。数字で示した効率は誘導モーターより圧倒的に低い。

上のグラフをご覧いただきたい。緑色の線で描いてあるのが車載用電気モーターの全開トルク曲線である。最大トルク200Nmに達するのはほんの一瞬だが、190Nm以上を300rpmから2200rpmあたりまで維持する。緑の数字で書き込まれた効率のパーセンテージは、全開でも70〜88%ときわめて高い。

いっぽう、赤い線で描いたNA(自然吸気)ガソリンエンジンのトルク曲線は、よく自動車のカタログで使われる全開全負荷のグラフである。ブレーキペダルを目一杯踏んでクルマが動かないようにした状態でアクセルペダルを床までベタ踏みにする様子を思い浮かべていただきたい。そういう状態での発生トルクだ。赤い数字で描いた熱効率はいちばん良いところで37%であり、ここが世に言われる「燃費の目玉」だ。

電気モーター(英語表記ではモーター=原動機でありエンジンもモーターと呼ばれるのでこう記す)のトルク曲線と内燃機関エンジンのトルク曲線は、鏡に映したように正反対だ。電気モーターは低回転域に強いが、回転が上昇するにつれて発生トルクが下がる。同時に効率も悪くなる。この傾向は誘導モーター(永久磁石を使わずコイルによる電磁石だけ)でも同期モーター(永久磁石とコイル電磁石を使う)でも同じだ。効率は同期モーターのほうがやや優れるが、総合的な性能では一長一短である。

著者
牧野 茂雄
テクニカルライター

1958年東京生まれ。新聞記者、雑誌編集長を経てフリーに。技術解説から企業経営、行政まで幅広く自動車産業界を取材してきた。中国やシンガポールなどの海外媒体にも寄稿。オーディオ誌「ステレオ時代」主筆としてオーディオ・音楽関係の執筆にも携わる。

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