新たなモビリティ社会を切り拓くヤマハの挑戦
1955年に設立されたヤマハ発動機。現在は静岡県磐田市に拠点を置き、オートバイを中心とした輸送用機器を製造するメーカーだ。
2023年では、二輪の売上規模は世界第3位。世界1位のホンダと業務提携していることも売上に大きく寄与している要因だ。出荷台数の約80%がアジア向けで、その中でも特にインドネシアにおいて収益性が向上している。二輪ばかりが注目されるヤマハ発動機だが、四輪事業にも進出している。
ヤマハ発動機における自動車事業の歴史は1967年まで遡る。当時の先進的技術を搭載し発表されたトヨタ2000GT。国産車初のスーパーカーとも呼ばれているモデルだが、心臓部分でもあるエンジンの開発にヤマハ発動機が関係している。
また、ゴルフカートもヤマハ発動機の数ある製品の一つだ。そして現在、ヤマハ発動機ではグリーンスローモビリティに注力しており、新たな活路を見出す。
今後ヤマハ発動機は、どのような未来を描くのか。その将来性について眺めていく。
ILLUSTRATION:Shutterstock
目次
グリーンスローモビリティを牽引するヤマハ発動機
ヤマハ発動機は、2014年から小型モビリティを開発し導入を進めている。これまでに50カ所以上で公道実証や導入への実績をもつ企業だ。車幅が狭く取り回しやすい4人乗りの「AR-04」や、低床フロアでスムーズに乗り降り可能な7人乗りモデル「AR-07」など、様々なモデルを展開している。
導入場所は主に観光地や離島に集中しており、地域活性化や観光客の利便性向上に貢献している。今後も活用方法を模索しながら、更なる導入拡大が期待されるだろう。
ヤマハ発動機以外にも、グリーンスローモビリティの開発・製作に参入しており、ヤマハ発動機に肩を並べるのが2007年設立のシンクトゥギャザー。こちらも早くから小型モビリティの開発に着手し、ヤマハ発動機同様に牽引する企業だ。
国土交通省が発表したデータによると、2022年3月末時点で、グリーンスローモビリティは計119カ所で走行実績があり、このうち29カ所で継続的な運行が認められている。
グリーンスローモビリティは、導入コストが比較的低く、少人数の移動需要を柔軟に満たせるという点が大きな魅力だ。将来的には自動運転化も可能とされており、今後ますます導入が進むことが予測できるだろう。
またEV開発ベンチャーなど、開発サイドの新規参入も活発化している。可能性を秘めているグリーンスローモビリティの、更なる技術革新と市場拡大に期待したい。