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減少する路線バス。危機を加速させる社会構造、本質を忘れた規制緩和の先

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減少する路線バス。危機を加速させる社会構造、本質を忘れた規制緩和の先

地方における交通問題はかねて話題とされてきた。その影響が徐々に大きくなっている。

特に路線バスに顕著だ。

バスの減便や廃止といえば、利用減少に伴う赤字が主な理由として挙げられていた。

しかし以前から続く全国的なバスドライバー不足が追い打ちをかける。コロナ禍後、この問題はさらに深刻化し、ドライバー不足による減便や廃止は地方だけでなくもはや全国的な問題として拡大している。崩れ落ちつつある交通を止めることはできるのだろうか。

ILLUSTRATION:Shutterstock

約9割が赤字となった路線バス

路線バスのピークはなんと今から60年ほど前の1960年代半ば。以降利用者減少が続いている。

2001年度から2024年度までの20年間で見るとその収入は約3割も減少してしまっている。利用者数は2010年代においては3大都市圏が微増したものの、それ以外では減少が止まらず、同期間に全国で多くの路線が廃止されるに至った。

日本バス協会によれば、全国の路線バス会社の94%は赤字とのことだ。

多くの会社は路線バス事業の赤字を比較的利益率の高い高速バスや貸し切りバスの収益で補い、常に厳しい経営を強いられてきた。この状況下では当然ながら賃上げの判断は難しく、バスドライバーの平均年収は全産業平均よりも低い水準であることが珍しくない。

不規則で長時間の勤務も敬遠される。そのため人手不足は年々深刻化していく。

サービスを提供できる人員が不足している中、時間外勤務によってダイヤを埋める形が常態化してしまう。コロナ禍による経営悪化に加え、それに伴う離職の増加もドライバー不足に拍車をかけた。

2024年4月、時間外労働の上限が年960時間に規制されたことで運行維持への影響がいよいよ甚大なものとなる。

都市部においても強いられる苦戦、根本解決は可能か

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