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EV化で消えるもの、生まれるもの。変わる業界と移ろう産業

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EV化で消えるもの、生まれるもの。変わる業界と移ろう産業

自動車の原動機が内燃機関から電動機に置き換わることで、自動車を構成する部品点数は約3万点から1万点程度になると言われている。

ステアリング系やサスペンション系 ブレーキ系、 シャシー・ボディ系など、動力に関わらない操舵や制動、 懸架などはEVになっても大きな変化はないかもしれないが、それでも自動車を構成する相当数の部品に変化が見られる。

また、「EV化」とは単にエンジンが電動モーターに置き換わるという単純な話ではない。自動車が電動化することによってエネルギーインフラやIoT、ネットサービスなどと連携するコネクテッド化やサービス化が進み、モビリティの在り方が変わっていく。当然ながら自動車のバリューチェーンも変化に対応していく必要がある。

自動車のパーツはどのように増減し、産業はどう変わっていくのだろうか。

ILLUSTRATION:Shutterstock

従来の自動車とEVの大きな違い、エンジンの有無

ガソリン車の部品点数はおよそ3万点にも及ぶ。EVになると約2万点かそれ以下にまで減少するとされている。その大きな理由の一つは、約1万点の部品からなるエンジンが比較的構造が単純な電気モーターに置き換わるからだ。

従来の自動車とEVの最大の違いは、このエンジンの有無が挙げられる。

エンジンに関係している部品はシリンダーヘッド、コンロッド、クランクケース、カムシャフト、吸気バルブ、排気バルブ、バルブスプリング、シリンダーブロック、ピストン、クランクシャフト、シリンダーなど非常に多い。

これらの部品一つひとつに各自動車メーカーのノウハウなどが織り込まれており、このエンジンだけでも1万以上のパーツが使用されていることも少なくない。

しかし、EVではこれらすべてが不要になる。

電動化により消える部品

ガソリン車にはエンジンやトランスミッション、ブレーキ、サスペンションなどをそれぞれ制御する電子制御ユニットが60〜100個ほど搭載されているが、EVになるとこのECUも半分以下に減るといわれている。

EVはエンジンの代わりに電気モーターと駆動用電池を搭載しており、従来のエンジンは基本的に不要だ。

さらにエンジン補機類も不要になるため、エアクリーナーや吸気マニホールド、燃料タンク、燃料ポンプ、燃料噴射装置、触媒やマフラー、点火装置と点火プラグ、 オルタネーター(交流発電機)、 スターターモーターなどの役割が変化する、もしくは不要になる。

エンジン以外ではトランスミッションが挙げられるが、これも中大型のEVではリダクションギヤ 、または2段程のトランスミッションが使用される可能性があるだろう。その理由としてはモーターの能力を十分に引き出すためだ。

加えて、クラッチやプロペラシャフトも不要になるだろう。また、左右輪を別々のモーターで駆動する場合はディファレンシャル装置も不要になる。

電動化により重要度が増す部品

一方で EVで必要になるパーツもある。その代表格はやはりモーターだろう。

そしてこのモーターを制御するインバーターも必要だ。モーターを高電圧で制御するためにDC-DCコンバーターをはじめとした制御回路も含めて一体化するのが通常であり、これはPCU(パワーコントロールユニット)などと呼称される。

また、良くも悪くも頻繁に議題に取り上げられる電池の存在も大きい。電池はEVにとって最も重要なパーツであり、現時点のEVにおける車体の大部分を占めている。

電池は基本的に床下を中心に配置されるが、巨大化な重量物であることに加えて安全性を十分に確保する必要がある。そのため、専用の車体構造も専用になってくる。

電動化が自動車産業界に及ぼす影響

自動車パーツの市場構成を部位別に見ると、エンジンそのものが約20%、補機類が約16%で程。その他諸々を含めると40%近くになる。これまでEV化によりに減少するパーツを大まかに複数列挙したが、それらを製造している会社にとってはいかに業容を変えて時流に対応するかが極めて重大な問題となるだろう。

エンジンが不要となれば燃料であるガソリン、軽油はもちろんのこと、 潤滑油も活躍の場を奪われてしまう。これらは非常に大きな産業なため経済に大きな影響を与えることが容易に推測できる。

また、EVは回生ブレーキを多用することでブレーキパッドの消耗は大きく減り、比例して需要も低下していく事が予想できる。

対してEVになっても基本的に残るとされているのはステアリング系、サスペンション系、ブレーキ系、シャシー・ボディ系であり、これらに使われる鉄鋼製品、非鉄金属製品、あるいはプラスチック製品、ゴム製品の変化は比較的軽微かもしれない。

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