DHEという手段で先鋭化するエンジンの役割|AVL|オーストリアの展望と提案
得意分野があるにもかかわらず、それ以外の領域でも活躍させようと無理をさせているのがいまのエンジンの姿。それでデメリットが生じているのなら、得手に特化して運転すればいい。AVLの考えるDHEについて訊いた(MotorFan illustrated 190号より。情報は当時のもの)。
TEXT:世良耕太(Kota SERA) FIGURE:AVL
内燃機関の使用を実質的に禁じる欧州の動き(最近、揺れている)に対して、エイヴィエルジャパン(以下AVL)は、2035年、あるいは40年といったフェーズでも、内燃機関は残る前提で開発を進めている。ただし、内燃機関単独で脱炭素に臨むつもりでいるわけではない。電動化は必須だ。
「我々はデディケーテッド・ハイブリッド・エンジン(DHE)と呼んでいます」と、エイヴィエルジャパンの野寄高宏氏は説明する。「電動化することによって(内燃機関は)ローエンドのトルクを捨てることができるし、高回転域もある程度割り切ることができる。燃費のいい運転領域を狙って強化することができます」
内燃機関単独であらゆる運転領域をカバーするとなると、発進から常用域での加速に必要なローエンドのトルクを確保する必要があるし、登坂や高速域での追い越しといった、大きな出力が求められるゾーンも満足させなければならない。ところが、電動化、すなわちモーター(48Vではなく高電圧が前提)との組み合わせを前提とすれば、その領域はモーターが受け持ってくれるので、エンジンはローエンドのトルクを考えなくてよくなる。
「今までのようなオールラウンドプレーヤーではなく、一部に特化する考え方です。低回転域を捨てることができればターボは効率化できますし、VVTを使わずにシンプルな機構にする方向も検討できる。高回転を捨てればバルブスプリングの諸元も含めて、フリクション低減につなげることができます」
内燃機関はなくならないが、電動化、それも高電圧系との組み合わせは必須だ。モーターと内燃機関の役割分担は、OEM側のコンセプト(コストや走り、燃費など、どこを狙うのか)によって決まる。
内燃機関を高効率化していくためのキーテクノロジーについては、一覧で示している。冷却損失の観点からロングストロークにしたり、燃焼サイクルの効率を考えてミラーサイクルを適用したりといったことも重要だが、AVLが重要視しているのは単筒容積だ。下の図は、単筒容積500ccのあたりに最適解があることを示している。排気量が1.5Lなら4気筒ではなく3気筒が熱効率の観点では正解だ。
気筒数を減らせば、全長を短くすることができるし、重量やフリクションの低減につながり、コストも下がる。振動が課題として考えられるが、モーターとの組み合わせを前提とすればアイドリングで回すことはほとんどなく、パワートレーン全体で評価した場合は大きなデメリットにはならないという考えだ。4気筒 → 3気筒化によって気筒あたりの加振力が増えるため、ベアリング負荷が大きくなってフリクションは増える方向。だが、モーターとの組み合わせが前提ならトルクを落とすことができ、ジャーナル径は太くせずに済む、という考えだ。
代替燃料への対応も進めている。最終的にどう落ち着くにしても「Drop in:置き換え」というのが、AVLの考え。例えばe-fuel(合成燃料のうち、再エネ由来電力を使って製造した水素を用いたもの)はガソリンと同じ成分とする方向で開発が進んでいる。石油由来のガソリンとは出自が違うだけ。だとすると内燃機関側での特別な対応は必要なく「Drop in」という判断になる。