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“プロペラシャフト付きAWD”とTNGA:最新の制御技術が拡げるオンデマンド型AWDの可能性

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“プロペラシャフト付きAWD”とTNGA:最新の制御技術が拡げるオンデマンド型AWDの可能性

TNGAはハイブリッド専用に非ず。大胆なスタイリングのコンパクトSUV、C-HR。AWDとなるガソリンエンジン仕様の走りと、それを支える技術についてエンジニアに訊いた。

TEXT:高橋一平(Ippey TAKAHASHI) FIGURE:TOYOTA PHOTO:MFi

少々不思議な感覚だ。プリウスと共通のTNGAプラットフォームに18インチの大径タイヤ、全高で90mm高くなっているSUVと聞いて、正直なところあまり良い想像をしていなかった。ところがだ、走り出して見ると、とにかくしっかりしている。大きくて重いホイール/タイヤで足がバタバタ、背が高くなったせいでフラフラという予感は見事に裏切られた。SUVにありがちな過剰なロールやピッチングは皆無。電動パワーステアリングの反応も素直で、ステアリングを切り込むと狙い通りに鼻先が向きを変えてくれる。その反応もむやみに鋭いものではなく、まさに狙い通り。まるで僕の意図を読んでいるかのように。

ロールやピッチングなどといった部分の落ち着きや、大径タイヤを履いていながらバタ付き感が皆無だったことについては、SACHS製のダンパーの存在やスタビライザーのチューニングが効いているのだろうと納得できた。というのも試乗した車両の走行距離はわずか400km足らず。ダンパーピストンの微小速度領域からしっかりと減衰力を生み出すSACHSのダンパーには少々酷な条件だ。スタビライザーにもまだ硬さが残っていたのか左右で拘束されている感があった。これらによって動きを制している様子が僕にも感じとることができたのだ。

こういうと、まるで「サスペンションがまったく動いていないからロールもピッチングもなかっただけ」と言っているようだが、決してそういうわけではない、あくまで外からの入力の“最初のカド”が取りきれていなかっただけで、まったくサスが動いていなかったわけではない。

実際にこのあと試乗したハイブリッド仕様のほうは、もう少し“カド”が取れている印象だった。そちらは走行700km弱。まだまだ硬さが残る状態だったが、走行距離300km程の差でずいぶんと印象が良い方向に傾いた。やはり、おろしたての新車ならではのものだったのだ。試乗後にエンジニアの方にこの点について伺ってみたが、そのあたりはやはり承知のうえだったようで「最低でも数千km、私どもの狙ったところを感じとって頂くには1万kmくらい走行したものでないと......」恐縮まじりだった。

ともあれ、この“カド”がなければ、バタバタもフラフラもないことについての理由も見つからず、狐にでもつままれた気分になって自己不信に陥っていたかもしれない。いや、エンジニアの方のひとことがなければ、もしかするとそれでも確信を持てずに今もモヤモヤした気分で原稿を書いていたかもしれない。要はそれほどうまくまとめられているのだ。

著者
Motor Fan illustrated

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