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テスラ・モデルYのボディ:「モデル3」の経験が生きた鋼製ボディ、最小限にとどめたアルミ鋳物

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テスラ・モデルYのボディ:「モデル3」の経験が生きた鋼製ボディ、最小限にとどめたアルミ鋳物

英・ロータスのシャシー/ボディ技術で作られた初代ロードスターからすでに14年。BEV専業メーカーのテスラは、現在でもさまざまな試行錯誤を続けている。

TEXT&PHOTO:牧野茂雄(Shigeo MAKINO) FIGURE:TESLA

鋼製ボディ「モデル3」の流れを汲む「モデルY」はテスラの量販車種だ。2020年春に量産が立ち上がり、中国上海工場製の車両はおもにLFP(リン酸鉄)電池を搭載する。かつて「モデル3」で接合の追い込みに手こずった経験からだろうか、リヤホイールアーチ周辺は大物のアルミ鋳物を使う。しかも左右ホイールアーチ部分をクロスメンバーでつないだ、左右一体の大物鋳物、いわゆるギガプレス・パーツである。

アルミ鋳造「ギガプレス」
ギガプレス用の金型の裏側。鉄製であり冷却水配管が多数備わる。横に立っている人と比べるとその大きさがわかるが、スバルの水平対向4気筒エンジンのシリンダーブロックを鋳造する金型でも高さは人の身長を超える。鋳物の設備は総じて大型だ。したがって金型の交換は頻繁に行なえるものではない。自然と車種間で共通使用できる部品に限られてくる。

ケアソフトの解析によると、鋼板4枚重ねの部位が「モデルY」には10か所ほどあるという。このアルミ鋳物と、その周辺の鋼板との接合にはSPR(セルフ・ピアシング・リベット)、通常のボルト、構造用接着剤が使われている。モデル3でも途中からリヤまわりにアルミ鋳物が入った。2022年モデルではフロント部分にも鋳物が入った。その結果、部品点数は減った。それでも4枚重ねのパートが残っているということは、左右リヤサスペンションまわりだけの一体鋳物化では4枚重ね部分をなくすことができなかった、ということだろう。

車両前端には冷却系があり、樹脂製のフロントエンドモジュールで支える。一見すると複雑に見えるが、スライド型ではない単純な金型を使った成形だ。樹脂で済むところは樹脂で作り重量増を避けている。部品に貼られているプレートを見ると北米生産である。上海工場製テスラの部品現地調達率は価格ベースで50%以下だろうか。
著者
牧野 茂雄
テクニカルライター

1958年東京生まれ。新聞記者、雑誌編集長を経てフリーに。技術解説から企業経営、行政まで幅広く自動車産業界を取材してきた。中国やシンガポールなどの海外媒体にも寄稿。オーディオ誌「ステレオ時代」主筆としとてオーディオ・音楽関係の執筆にも携わる。

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