カーボンボディの直し方
BMW i3を題材にする
今日びの鋼製ボディは剛性が強すぎてそう簡単には直せないという。
ましてやアルミ合金ボディは、溶接の際の熱歪みが多いからなおさらだ。
では、CFRP製ボディはどうなのか。外皮ではなく、構造体は。
高価格スーパーカーではなく、普及価格帯に降りてきたCFRPボディを持つBMW i3をケーススタディとして、
専門家にその実際を尋ねた。
TEXT:沢村慎太朗(Sintarrow SAWAMURA)
PHOTO:MFi/BMW
CFRPとは炭素繊維強化樹脂であり、炭素繊維の含有量は体積にしておよそ半分近くに及ぶが、形状を担保しているのは繊維であろうはずもなくプラスチックである。そこで我々は考える。衝突事故のときのことを。いったん壊れてしまったプラスチックは果たして直るのか。
ちょこんとブツけてしまったら最後、モノコック全交換で新車が買えるほどの費用が掛かるという地獄が待っているのではないか。バケツだのバンパーだのプラスチックなら接着剤で補修することはできるだろうが、自動車のモノコックの場合は応力担体としての剛性や強度を回復しなければならないのだし——。
そんな疑義への答えを見つけるべく、我々はレース分野におけるCFRPの草分けとして知られる株式会社チャレンヂを訪問した。取材依頼に応えて下さったのは代表取締役社長の中村敬佳さんである。当日は、具体例としてBMW i3を同道させた。
ご存知のようにi3は、フロア部をアルミ材で構成し、それにCFRP製の車体を載せた一種のハイブリッド構造。そのCFRPに用いられる炭素繊維は、PAN系樹脂から作った直径7μmの長繊維で、これを50k(50000フィラメント)束ねたラージトウに分類される糸。成形はRTM法である。
中村社長の答えは第一声から明確であった。
「直ります」
そして「ただし」の接続詞で始まる補足が続く。熱硬化性樹脂を使うCFRPは可能だが、熱可塑性樹脂を使うCFRTP(炭素繊維強化熱可塑性樹脂)は不可能であると。またSMCも、脱型のために剥離剤を塗らずに済ますべく、材料が自己離型剤を含有するために補修が不可能だという。