開く
BUSINESS

広がりをみせるEVカート、TOM’Sが掲げる普及戦略とは|人とくるまのテクノロジー展 2024

公開日:
更新日:
広がりをみせるEVカート、TOM’Sが掲げる普及戦略とは|人とくるまのテクノロジー展 2024

「人とくるまのテクノロジー展2024」横浜の展示会場で、目に留まったのは、コンパクトなブースにタテ型に展示された紫色のカートだ。「レース事業」「自動車用品事業」「デザイン事業」「モビリティ事業」を展開する株式会社トムスは、日本自動車レース工業会のブースでEVカートとエンジンの展示を行った。技術革新本部の岡本 航希氏にEVカートの技術や今後の展望についてうかがった。


TEXT&PHOTO:石原 健児(Kenji Ishihara)
主催:公益社団法人自動車技術会

EVカートの普及に尽力

EVカートは国内では近年に始まったモータースポーツ。JAF(一般社団法人日本自動車連盟)が主催する「全日本カート選手権」には、2022年からEV部門が新設された。株式会社トムス(以下:トムス)では2022年、競技用EVレーシングカート「TOMʼS EV KC-22」を初走行。
JAF主催の選手権には、EVサプライヤー兼共同オーガナイザーとして参加している。EVカートのトップスピードは120kmにのぼり、ガソリン車カートと比べてもスペックに遜色はない。レースは1周回1分程度。1回のレース時間は15分ほどと短めなのが特徴だ。

レーシング用カートでも安全面に配慮

トムスでは、カートのスペックやデザインを自社で企画。パワーユニットなど各種サプライヤーから仕入れた部品を組み合わせ、キッズ用からレーシング用まで、動力特性に応じた車両開発を行っている。

EVカートは基本的にエンジンやミッションがない。代わりにバッテリーとモーター、バッテリーからの電気をモーターに伝えるコンピューター内蔵のコントロールユニットが搭載されている。コントロールユニットは、アクセル操作時に適切な量の電流を送る役割を担う。

ドライバーシートの左側にバッテリーを配置

コントロールユニット上部に設置されている赤いボタンは、非常停止用ボタン。「クラッシュ時や車体のトラブル時などに、意図しない場所に電流が流れないよう、バッテリーからの電力供給を緊急停止できます」と岡本氏。

EVカートの充電は200Vの電源を太いコードで接続。満充電までは3時間程度で完了する。充電用のコネクターは「間違って触らない」「走行時に巻き込まない」といった点に配慮し、シートの裏側に設置されている。レーシング用カードでもドライバーへの安全面に配慮を忘れない。

お台場にカートのエンターテインメント施設を開設

2023年12月、トムスは東京お台場にモータースポーツとテクノロジーが融合したエンターテインメント施設「CITY CIRCUIT TOKYO BAY(シティサーキット東京ベイ)」を開設した。施設内には大人用カートのほか、屋内にキッズ用EVカートも用意しており、小学生から大人まで幅広い年代が楽しむことのできる。(キッズカートは身長105cm以上からを推奨)。「車やモータースポーツに興味がない層もカートに触れるきっかけになれば、という想いがあるんです」(岡本氏)。

2023年、CITY CIRCUIT TOKYO BAYをオープン(ロゴマークはトムス公式サイトより)

安全・安心できるEVカート、今後も都市部で展開

今後もEVカートの普及に力を入れる

CITY CIRCUIT TOKYO BAYでは、初心者の方も安心してEVカートを楽しめるよう安全面には十分に配慮している。たとえば、車体は他車や障害物がぶつかっても安全な構造にしている。レンタルカートは大人用と子供用の2種類があり、どちらも遠隔で1km/h単位での制限速度の設定が可能だ。カートの制限速度はコース上の電子フラッグと連動している。また、お子様向けには、最初は徒歩程度の速度の走行でカートの運転に慣れてもらい、徐々に制限速度を上げていくように運用されている。「EVカートの趣旨は、より多くの方に楽しんでもらうことですので、一般の方が多く訪れるCITY CIRCUIT TOKYO BAYでは、より安全面に配慮しています」。安全重視の姿勢には好感を覚える。

「騒音がない」「排気ガスがない」というEVの長所が都市部でのCITY CIRCUIT TOKYO BAYの開業につながった。トムスでは今後、より多くの方にカートを楽しんでもらうよう、
都市部でのさらなる展開を進める予定だ。安全に、そして安心して楽しめるEVカート。機会があれば、一度触れてみてはいかがだろうか。

著者
石原健児

取材ライター。
1966年東京生まれの北海道育ち。大学卒業後、イベント関連企業、不動産業を経て印刷業へ。勤務先のM&A・倒産をきっかけに2016年からライター業を始める。医療系WEB媒体、ビジネス誌「クオリタス」などで活動。医師、弁護士、企業経営者、エンドユーザーなどを対象に取材してきた。総取材人数はだいたい1500人。就学前までに自動車や転落事故で「九死に二生」位は得ていると思う。最近好きな言葉は「生きてるだけで丸儲け」。

人とくるまのテクノロジー展 2024 YOKOHAMA

PICK UP