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外れてしまうのならタガをはめればいい:藤倉コンポジットのCFRPロータースリーブ|人とくるまのテクノロジー展 2024

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外れてしまうのならタガをはめればいい:藤倉コンポジットのCFRPロータースリーブ|人とくるまのテクノロジー展 2024

高回転化で高効率化をねらうモーター。しかし何万回転という超高速の世界になると、こわれないための工夫が必要になる。藤倉コンポジットのユニークな提案品をご紹介しよう。

「そうですよね」

説明を受けてまず出た言葉である。藤倉コンポジットが提案している「高回転モーター向けCFRPロータースリーブ」とは、名称のとおり回転体=ローターに炭素繊維強化樹脂=CFRPの筒をかぶせるという仕組み。永久磁石式同期機において、効率を高めていくならローター内部に埋め込んでいる磁石は固定子(ステーター)に近いほど有利。際たる手段がローター表面に永久磁石を貼り付けるSPM=Surface Permanent Magnet式だが、遠心力ではがれる恐れがある。とくに近年のモーターは小型軽量化を図り高回転化志向であることから、なおその心配が募る。

ならばスリーブで押さえてしまえばいいではないか。それがこの製品の狙いである。

CFRP製のスリーブの厚さは現状0.2mm、半分の0.1mm厚の検討も進めているという。この薄さにおいてもステンレス製スリーブと比較した際にも周方向の強度は5.3倍を実現(ステンレスは塑性変形時/CFRPは破断時での比較)、当然質量を比べても80%削減と、圧倒的な優位性を誇る。磁性体ではなく、渦電流損を低減できるのもメリットだ。

ローターとスリーブの接合については接着剤を用いるか、ローターを冷却し径方向に小さくなった時点でスリーブに装着する冷やし嵌めを想定。寸法安定性に優れるCFRPの特性を活かした工法をとる。

周方向に破断してしまってはスリーブの意味をなさないので、炭素繊維は長繊維であることが必要。プリプレグからのオートクレーブ成形で作成する。先述の0.1mm厚のスリーブでは軸方向に薄く割れてしまうのが課題とのこと、強い構造を模索する状況だという。

著者
Motor Fan illustrated

「テクノロジーがわかると、クルマはもっと面白い」
自動車の技術を写真や図版で紹介する、世界でも稀有でユニークな誌面を展開しています。
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