「不快感のなさ」に驚いた...皮膚温度の変化を解析し、快適さを定量的に評価するトヨタ紡織「サーマルコンフォートシート」に乗ってみた|人とくるまのテクノロジー展 2024
夏場の車内は、はっきり言って不快だ。炎天下に放置したクルマの室内はものすごく暑い。だからといって冷房をかけると、逆に体を冷やしすぎて気分が悪くなる。体温調節がすこぶる難しい夏場の車内を、どうにか快適に過ごせないものか。
トヨタ紡織は、人とくるまのテクノロジー展 2024にて快適性と省エネを両立させる革新的なシート「サーマルコンフォートシート」を展示した。実際にサーマルコンフォートシートに乗ってみて、驚いたのは、温度による「不快感のなさ」だ。しかも、サーマルコンフォートシートはエネルギー効率を向上させて省エネも実現しているという。どのようにして快適性と省エネを両立させたのか、その技術についてシート先行開発部 第4開発室の塚本健一氏に話を伺った。
TEXT:庭野 ほたる(Hotaru Niwano)
PHOTO:村上 弥生(Yayoi Murakami)
主催:公益社団法人自動車技術会
サーマルコンフォートシートとは
トヨタ紡織のサーマルコンフォートシートは、効率的なシートベンチレーションとニューマチックシステムを組み合わせ、夏場でも冬場でも快適な乗り心地を提供する。新技術により空気の流れを最適化し、冷却効果を最大化。従来のシートベンチレーションシステムに比べて、効率を向上させるための流路改善が施されており、より高い冷却効果を発揮する。
また、冬場には温風を首元に供給することで、全身を温められる。これにより、エネルギー効率を向上させながら、快適な車内環境を実現している。「シートベンチレーションの流路改善により、冷却効果が格段に向上しました。体の側を冷たい空気が流れることで、夏の暑さを快適に乗り切れます」と塚本氏は説明する。
実際に座って体感。空気の流れを作り出すニューマチックシステム
実際にサーマルコンフォートシートに座ってみると、その快適さをより顕著に感じることができた。たしかに涼しさを身近に感じ、シートにまとわりつくような不快感がない。シートに密着しているはずの背中からも冷風を感じた。逆に暖房時は、シートに密着している部分から温かみを感じ、やがて体全体が温かくなった。
このシートにはニューマチックシステムが組み込まれており、空気の袋が内蔵されている。この袋がシート表面と体の間に空気の流れを作り出し、冷却効果を向上させている。従来はマッサージ機能として使われていたニューマチックシステム。今回のシートでは空調機能の一部として活用されており、長時間座っていても快適さを維持する。
「ニューマチックシステムを利用して、空気の通り道を確保し、冷却効果を高めました。これにより、長時間座っていても快適さを保てるようになりました」と塚本氏は語る。
冬場には、シート内の空気袋を膨らませることで、シートと体の接触面積を増やし、シートヒーターの効率を高める。これにより、温風が体に均等に伝わり、全身がより効果的に温められるというわけだ。
皮膚温度の変化を科学的に解析
温度の体感は個人差が大きい。
トヨタ紡織は、温冷感を独自に数値化することでシートの効果を解析。皮膚温度の変化をもとに、快適性を科学的に評価し、改善を図っている。
塚本氏によると、「温度センサーを使用して皮膚温度を計測し、そのデータをもとに温冷感を数値化しています。どの程度の温度変化がどのような快適さを提供するのかを定量的に評価しています」とのことだ。
このアプローチにより、主観的な感覚を科学的に裏付けられ、より精確なシートの調整が可能になるのだ。
エネルギー効率のさらなる向上を目指す
トヨタ紡織のサーマルコンフォートシートは、車内の快適性を大幅に向上させ、環境に配慮した持続可能な製品として市場で高く評価されると期待される。
今後は、車両全体との連携を強化し、エネルギー効率のさらなる向上を目指す。トヨタ紡織の今後の展開に注目したい。