クルマがドライバーの「意思」を読み取る。東海理化が描く未来の車内体験「インテリジェントコックピット」とは|人とくるまのテクノロジー展 2024
東海理化が展示する「インテリジェントコックピット」は、「人がクルマを操作する世界から“人をとらえ、意思を読み取り、人に応える”世界へ」をコンセプトとして生まれた。ユーザーの意思を読み取り、直感的な操作を可能にする革新的な車内システムである。車が持つ機能や求められる価値が多様化するなかで、同社が提案するのは“未来の車内体験”。その主要となる3つの特徴について、新商品開発部の花木秀信氏から話を伺った。
TEXT:庭野 ほたる(Hotaru Niwano)
PHOTO:村上 弥生(Yayoi Murakami)
主催:公益社団法人自動車技術会
「BAMBOO+」竹を使った環境に優しい素材
東海理化のインテリジェントコックピットは、環境に優しい素材の使用を積極的に取り入れている。「BAMBOO+」(バンブープラス)という新しい樹脂素材がそれだ。この素材は国産の竹と樹脂で構成されており、竹の持続可能な特性を活かしつつ、樹脂の加工性を併せ持つ。
竹は成長が早く、再生可能な資源として非常に優れている。東海理化は、竹の加工技術を駆使して、ステアリングやトレー、マットなどの内装部品に「BAMBOO+」を適用した。例えば、車内の床材に使用されており、見た目の美しさと環境への配慮を両立させている。
花木氏は「竹は持続可能な資源であり、従来からステアリングに竹素材を利用してきた経験を活かしています」と述べている。このような素材の使用は、車両のエコロジー性能を高めるだけでなく、ユーザーに対しても環境に優しい選択肢を提供できる。
広々とした車内空間の提供
さらに、モジュール式の装備を採用。必要に応じてテーブルやモニターなどの後付けが可能だ。食事をするためのテーブル、仕事をするためのデスク、そして、空中結像デバイス(以下画像参照)。このように、ユーザーは車内空間を自由にカスタマイズできる。自分だけの車内空間に憧れを持つ人も多いのではないだろうか。
花木氏は、「モジュール式の装備を外しておけば、大きな荷物を置くこともできます。私たちは、この自由度の入り口を提案し、皆さんと一緒にこの空間をどうやって使っていくのかを考え、新しい車の使い方を共創していきたいと思っています」と語った。
ドライバーの状態に応じた快適な運転環境
東海理化のインテリジェントコックピットは、ドライバーの健康状態をリアルタイムで監視し、最適な運転環境を提供する。具体的には、ステアリングに内蔵されたセンサがドライバーの心拍数や姿勢をモニタリングし、疲労やストレスを検知。ドライバーの状態に応じて、エージェントが適切なアドバイスや休憩の提案を行うというものだ。
例えば、長距離運転中に自身の疲れに気づかなかったとしよう。すると、ステアリングに内蔵されたセンサーが心電図の波形を分析。エージェントが「ドライバーが疲れている」と判断し、休憩を提案する。また必要に応じて、覚醒効果のある香りを車内に放出することもできる。さらに、運転者の感情や状態に応じた音楽を提供し、リラックスできる環境を作り出すことも可能という訳だ。クルマがドライバーの環境と感情を理解することにより、ドライバーは集中力を維持できる。
「エージェントが提案するアクションはイエスかノーの2択です。ドライバーは複雑な操作や思考を必要とせずに簡単に判断ができます。例えば、疲れている場合にはエージェントが近くの飲食店をピックアップし休憩を促します。ドライバーはイエスかノーで回答するだけです」と花木氏は説明する。
このような先進的なシステムは、ドライバーの安全性を高めるだけでなく、快適な運転体験を提供する。
快適性と安全性を兼ね備えたインテリジェントコックピット
東海理化のインテリジェントコックピットは、環境に優しい素材、広々とした空間、ドライバーの状態に応じた快適な運転環境の3つを備えた「未来の車内環境」だ。モジュール式の装備やドライバーの健康状態を監視し最適化する技術は、次世代の自動車インテリアとして大きな可能性を秘めている。
東海理化はこれらの技術を組み合わせることで、車内の快適性と安全性を向上させると共に、環境負荷の低減を実現している。このインテリジェントコックピットは、単なる車内装飾の一部ではなく、持続可能な未来のための重要な一歩となるはずだ。