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未だ手探り状態のEVバッテリーリサイクル市場、サービスを確立しつつある諸外国プレイヤーと着実に進む日本勢の動向

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未だ手探り状態のEVバッテリーリサイクル市場、サービスを確立しつつある諸外国プレイヤーと着実に進む日本勢の動向

EVやHEVなどに搭載されている大型バッテリーパックが消耗してくると、問題となるのがそのバッテリーをどうするかということ。ただ廃棄してしまうことは世界的に忌避の方向で一致しているはずだ。環境的な観点からはもちろん、バッテリーに含まれるリチウムやコバルトなどの資源は有限なため、その都度抽出することが困難で高コストとなってしまうためだ。

さて、バッテリーには様々な規格が存在しているが、一般的には容量が初期値の80%にまで低下すると、本来の用途に対しては消耗した状態であるとされる。

この状態では自動車に期待される航続距離を十分に満たすことはできないかもしれないが、据え置き型、定置型アプリ―ションや制約的な用途には基本的には問題なく対応できる。リサイクルと回収さえできれば様々な用途で活躍することができる、と言えば簡単だが実際はそうもいかない。

このようなリサイクルと回収が、技術的にもコスト的にも非常に難しいためだ。具体的には内部の化学スラリーや、アノードおよびカソード材料などに含まれる鉱物の分離および抽出はそう容易ではない。

長年整備され、今や成熟した従来の鉛蓄電池のリサイクルチェーンとは異なり、リチウムベースの電池のリサイクルプロセスは複雑であり、リサイクルチェーンも十分に確立されていない。それでもなお、効率的で費用対効果が高く、安全なリサイクル方法の考案と実証に多くの投資や取り組みが行われている。

2050年には廃棄電池は2,000万トンを超える

いずれ訪れるEVの大量普及時代。それは大量廃棄時代と表裏一体かもしれない。

環境負荷の軽減だけでなく、リチウムやコバルトといったレアメタルの確保という観点でも電池サイクルは極めて重要な観点となる。しかしレアアースの調達先は各国中国に依存しており、どうしても地政学リスクが避けられない。材料調達の危機を回避する目的でもリサイクルが必要とされる。

アメリカMcKinsey & Companyは2030年ごろからEVの廃棄によって発生する使用済み電池は急増していくと予測している。

リサイクルされる車載電池の量は、2020年は5万トンだったものの、2030年には185万トン、2040年には2,050万トンへと急増する。この2,050万トンのうち、生産時の品質不良で廃棄される電池が6%で、残る94%が中古EVから出る使用済み電池だ。

この急激に進むリサイクル需要に各国各社はどう対応していくのか。

欧州で始まる規制により電池のリサイクル義務化へ

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