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"倒れない"電動マイクロモビリティ「Lactivo」の軽量化技術と高度な安全設計に迫る - 山田製作所|第3回 オートモーティブ ワールド【秋】-クルマの先端技術展-

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"倒れない"電動マイクロモビリティ「Lactivo」の軽量化技術と高度な安全設計に迫る - 山田製作所|第3回 オートモーティブ ワールド【秋】-クルマの先端技術展-

2024年9月4日から6日に開催された第3回 オートモーティブ ワールドにおいて、山田製作所は、電動マイクロモビリティ「Lactivo(ラクティボ)」を公開した。「高齢者向けに開発したのですが、予想外に女性にも人気なんです」と事業管理本部 新事業開発ブロックの谷 浩彰氏は笑顔で語ってくれた。今回は「倒れない」「2重ブレーキ」など、使用者の安全性を重視した小型モビリティについて紹介する。

PHOTO&TEXT:石原健児
主催:RX Japan株式会社

車重はバッテリー込みで41㎏、シニアカーの約半分まで軽量化を実現

群馬県に本社・工場を構える株式会社山田製作所は、オイルポンプ・ウォーターポンプ・トランスミッション用の油圧制御部品を主力とするパワートレイン部品や、ステアリングコラムを中心とした操舵部品の専門メーカーだ。これまで、ホンダをはじめとする国内メーカーに多数の製品を供給してきた実績がある。これらの経験を活かし開発を進めてきたのが4輪電動マイクロモビリティ「Lactivo(ラクティボ)」である。

大人用自転車よりもコンパクト

Lactivoは全長1290mm、全高1070mmと、大人用27インチ自転車よりもコンパクトサイズながら、乗員と荷物を合わせて100kgの積載が可能である。4輪仕様の車体は全幅570mmでシニアカー並みの安定性を持つ。また、車重はバッテリー込みで41㎏。一般的なシニアカーで約70kg(バッテリー除く)であるため、いかに軽量であるかが分かるだろう。

タイヤは10インチ。前後にサスペンションを装備し、特に前輪は左右独立サスで悪路でも安定した走行が可能だ。250Wの駆動モーターを積載し最高速度は12km/h。自転車専用歩道での走行が可能な時速6km/hの低速モードも備えている。家庭用AC電源から7~8時間で満充電でき、一回の充電で最大30kmの走行が可能。街乗りには十分なスペックだ。「登坂性能も高く、70kgの男性を乗せて11度の坂を上ることができます」と谷氏は語る。

ディスクブレーキと電動ブレーキの2重構造で「倒れない」「安全」な車体づくり

「ラクティボのコンセプトは『倒れない』モビリティです。倒れず安定感のある車体をめざしました」(谷氏)

開発のきっかけはスタッフ親族の高齢化。免許を返納した親族が日々の移動に苦労する姿を見て開発の話になったという。高齢者を対象とし、とにかく「安全」にこだわった。車体が倒れないことを基本に、ブレーキにはディスクブレーキと電動ブレーキの2重構造を採用。仮にディスクブレーキが効かなくなっても、電動ブレーキが車体を確実に停止させる。逆に、電動ブレーキに不具合が起こってもディスクブレーキが働く仕組みだ。しかも、前後のブレーキが独立しているため、一方が故障してももう一方が車体を止めるという仕組みである。このような安全面への徹底した配慮が開発の随所に見られる。

4輪仕様で安定感バツグン

車体にはヘッドライトやウインカーはもちろん、法規で定められたグリーンランプ(最高速度表示灯)も装備している。「小型モビリティの法定最高速度は20kmですが、ラクティボの最高速度を12kmに抑えたのは、急なハンドル操作をしても転倒しない速度にしたためです」

「倒れない」ことをさまざまな角度から考慮した開発の経緯が垣間見えた。

著者
石原健児

取材ライター。
1966年東京生まれの北海道育ち。大学卒業後、イベント関連企業、不動産業を経て印刷業へ。勤務先のM&A・倒産をきっかけに2016年からライター業を始める。医療系WEB媒体、ビジネス誌「クオリタス」などで活動。医師、弁護士、企業経営者、エンドユーザーなどを対象に取材してきた。総取材人数はだいたい1500人。就学前までに自動車や転落事故で「九死に二生」位は得ていると思う。最近好きな言葉は「生きてるだけで丸儲け」。

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