自動運転の今。国内外の進捗状況や実証実験の現在地
近年の自動車の自動運転実用化に向けた取り組みは、世界各国で活発化している。
2020年4月に総合技研が発表した「2020年版 自動運転システムの現状と将来予測」によると、日本国内のADAS(先進運転支援システム)の市場は、2030年にはおよそ2,464億円に達する見込みだ。
そんな近年の自動運転実用化に向けた取り組みの中でも、初期の段階で活動を開始したのが「Google」だ。
同社は2009年、自動運転車開発企業「Waymo(ウェイモ)」の前身となる自動運転プロジェクト「Self Driving Car Project」を、スタンフォード人工知能研究所の元ディレクター「セバスチアン・スラン」氏と、Googleストリートビュー発明者が共同で主導のもと開始した。
一方、日本企業の近年の取り組みは、Googleが自動運転の実現に向けた取り組みを開始した前年からはじまった。
2008年「ZMP」は、自動運転技術の開発を開始。翌2009年には、実車の1/10スケールでセンサーやアルゴリズムの室内実験を可能にし、自動運転の基礎技術開発を支える「RoboCar 1/10」を発売した。
2014年には、情報通信技術(ICT)を駆使して道路交通問題の解決を目指す高度道路交通システム「ITS(Intelligent Transport Systems)」や、自動運転に関する日本政府の全体戦略「官民ITS構想・ロードマップ」が策定された。これは、自動運転実現に向け、官民一体となって戦略を立案し、実行することを目的としたものだ。
そんな自動運転の評価を表す基準は、米国のSAE(Society of Automotive Engineers)が策定した0~5までの6段階の「自動運転レベル」が主流とされている。
官民ITS構想・ロードマップでは、2000年までの目標として、レベル3(条件付運転自動化)に含まれる高速道路渋滞時に自動運転システムを利用可能な自家用車の市場投入や、レベル4(高度運転自動化)に含まれる限定地域での無人自動運転移動サービスの整備を掲げており、これを実現した。
目次
日本の自動運転の動向。国内主要自動車メーカーの一般車両の自動運転技術について
日本政府は2014年に策定された官民ITS構想・ロードマップにて、高速道路におけるレベル4を2025年に実現する目標を掲げている。これまでの目標達成状況から見るに、誤差は生まれどおおよそ予測通りに実現するのではないだろうか。
その評価基準として、高速道路上からの情報提供をするなど、自動運転支援道の仕組みの整備や、高速道路での自動運転トラックの車両技術の民間開発などが挙げられている。
一般車両に関しては、高速道路においては、アクセルペダルやステアリングから手足を離すハンズオフ運転が可能な高度な自動運転技術、レベル2+にあたる「ハンズオフ」機能がすでに実現し、実装した車両が一般販売されている。
日産は、2019年に発表した「ProPILOT2.0(プロパイロット 2.0)」を実装し、追い越し支援や車線変更支援機能なども搭載した新型「スカイライン」を同年9月に発売した。
ホンダに関しては、2021年3月にハンズオフを実現するADAS「Honda SENSING Elite(ホンダ センシングエリート)」を実装した新型レジェンドを発売した。同モデルは、レベル3技術にあたる運転中に目を離すことができる「アイズオフ」機能を実現する「Traffic Jam Pilot(トラフィックジャムパイロット)」を実装し、世界で初めて量産されたモデルとしても有名だ。
一方でトヨタは2021年4月、新型「MIRAI」と新型レクサス「LS」に「Advanced Drive(アドバンスト ドライブ)」を実装した。これは、ハンズオフに加えて、分岐や車線変更、追い越しなど、高速道路・自動車専用道路の走行を支援するシステムだ。
このように日本の自動車メーカー各社は、レベル2+のハンズオフ機能を中心に、企業の特色を出しているのが特徴と言えるだろう。
そして、日本の自動車メーカーが抱えているのは、自動運転レベル3実用化に向けた課題だ。現時点で、レベル3を実現し、搭載した自家用車の一般販売に至っているのはホンダだけに限られている。
e-Paletteによる無人自動運転シャトル実用化に向け、実証実験に取り組むトヨタ
自家用車の自動運転技術に関しては、レベル3を実現したホンダが優勢なものの、旅客車両を含めた場合には、トヨタの自動運転戦略の要「e-Palette(イーパレット)」に軍配が上がる。
トヨタが開発を進める自動運転EVのイーパレットは、移動や物流の他、物販など多目的に活用できるモビリティサービス(MaaS)専用の次世代EVだ。
自動運転を想定した運転席なしと、自動・手動運転が可能な運転席ありの2つ仕様があり、レベル4での実用化を前提とし、シャトルサービスでの活躍が期待されている。
2021年に開催された「東京オリンピック・パラリンピック」の選手村では、イーパレットが16台が導入され、選手や関係者の送迎用途でサービスの実証実験が行われたことでも有名だ。
そんなイーパレットは、種類を選ばず自動運転システムが装着可能な制御インターフェイスを備えている他、システムが故障・異常をきたした際に車両を安全に停止、もしくは走行させるための「ガーディアンシステム」が備えられている。
2024年1月には、豊田市つながる社会実証推進協議会の取組の一環として、鞍ケ池公園のパークトレイン用車両として走行させる実証実験が4日間に渡って行われた。
静岡県裾野市で建設中の「Woven City」では、2025年に一部実証開始する予定がある。その実証実験では、イーパレットが導入される可能性が非常に高く、今後1年程度で本格的に展開される可能性が高いと見られている。