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NVIDIAが牽引する自動運転を支えるAI技術。開発企業の動向はあれどセキュリティ課題は解決を見ない

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NVIDIAが牽引する自動運転を支えるAI技術。開発企業の動向はあれどセキュリティ課題は解決を見ない

AIは、自動運転技術の発展に欠かせない技術だ。

自動運転システムにおけるAIの役割は、映像からの情報分析や状況判断・予測など多岐にわたる。

例えば、人に代わり自動運転システムが主体となるレベル4自動運転では、歩行者や路肩に停めてある車両を識別するのはもちろんのこと、減速・停車するのか、もしくは車線を変更して避けるのかを判断しなくてはならない。さらに、これら多くの動作には予測が伴う。

さらに、自家用自動運転車はもちろんの頃、自動運転タクシーなど、公共サービスに導入する際には、ルート判断なども重要なポイントとなる。

このような運転の自動化に要求される様々な状況を想定し、手動でプログラムするのは困難と言えるだろう。そこで自動運転には、ディープラーニング(深層学習)により学習するAIが用いられる。

ディープラーニングは2006年、イギリス出身のコンピュータ科学者「ジェフリー・ヒントン」氏らによって考案された機械学習の手法の一つだ。この技術では、大量のデータから学習することでパターン・ルールを抽出し、状況に応じた判断を下す。

つまり、多量のデータを学習することで、様々な状況判断や学習したパターン・ルールに基づく予測を可能とした技術だ。ディープラーニングの登場により、AIは飛躍的進化を遂げた。

そんな自動運転と関わりの深いAIの分野では、どのような技術開発が行われているのだろうか。

中国「BYD」も採用を表明した、米「NVIDIA」が開発したAI機能搭載の集中型車載コンピューター「NVIDIA DRIVE Thor」

自動運転分野においてAIが欠かせない存在となった昨今、半導体や情報通信機器を扱う企業の取り組みも注目を集めている。

米国の半導体メーカー「NVIDIA(エヌビディア)」もその一つだ。

2015年、同社は「CES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)」で、自動運転開発向けの手のひらサイズの高エネルギー効率AIコンピュータ「NVIDIA DRIVE PX」と、最先端のハードウェアとソフトウェアの両方を含むコクピット・コンピュータ「NVIDIA DRIVE CX」を発表し、自動運転分野へ参入した。

年々加速する自動車のコンピューター化に、半導体メーカーとして培ってきた技術力を活かす考えだ。

2022年9月20日には、最先端のAI機能を搭載した集中型車載コンピューター「NVIDIA DRIVE Thor」を発表。これにより、自動運転や運転支援、駐車、ドライバー・乗員の監視、デジタルメーターパネル、車載インフォテインメント(IVI)などのインテリジェント機能が単一のシステムに統合された。

NVIDIA DRIVE Thorは、中国大手EVメーカー「BYD」の他「ZEEKER」や「Li Auto」、「XPENG」、「Hyper」など錚々たる面々が採用を表明しており、2025年内にも量産車に搭載される予定だ。

2024年9月20日には、中国アリババグループのクラウドコンピューティング事業部門「Alibaba Cloud(アリババクラウド)」が開発したLLM(大規模言語モデル)「Qwen」と、エヌビディアの自動運転向け半導体が統合したことが発表された。

この提携により、アリババクラウド独自のLLM Qwenシリーズは、2019年12月に登場した自動運転車向けの「NVIDIA DRIVE AGX Orin」プラットフォームに統合。エヌビディアのモデルアクセラレーション(モデル推論処理の高速化)技術を活用することで、計算コストを大幅に削減し、複雑なタスクのリアルタイム処理での待ち時間を最小限に抑えることができるようになった。

そしてQwenの機能により、車載音声アシスタントは複雑な問い合わせへの対応やビジュアルインテリジェンス(視覚的知能)処理が可能となった。

この機能は、ダイナミックかつ継続的な会話を可能にしただけでなく、近くのランドマークに関する情報の提供や天候に応じてヘッドライト点灯を促すなど、周囲の状況に合わせた提案も実現できるようだ。

今後アリババクラウドは、エヌビディア協力の下、QwenをNVIDIA DRIVE Thorにも適用する予定を発表している。

将棋AI「Ponanza」を生み出した日本の「Turing」が取り組む完全自動運転車両の開発。2023年には小脳・大脳のように2つのモジュールを組み合わせた生成AI開発に着手

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