世界初、液体水素車でのレース参戦。トヨタ、航続距離3倍を達成した液体水素レーシングカーを公開|JAPAN MOBILITY SHOW 2024
2024年10月15日から18日まで幕張メッセで開催されたJAPAN MOBILITY SHOW 2024。トヨタ自動車は世界初となる液体水素車のレーシングカーを公開した。この車両は、従来の気体水素を使用したモデルとは異なり、燃料を液体化することで、より多くの水素をコンパクトに搭載できることが特徴である。今回の展示で特に注目を集めたのは、異なる形状をした2つの水素燃料タンクである。液体水素の使用に伴い、タンクの設計がどのように進化したかが明確に示されていた。水素燃料モデル進化の工夫や軌跡について、トヨタ自動車株式会社GR車両開発部 先行開発Gr主幹の山本亮介氏に伺った。
TEXT&PHOTO :石原健児
主催:一般社団法人日本自動車工業会(JAMA)
世界初となる液体水素車のレース参戦
トヨタ自動車(以下:トヨタ)は、2021年から水素燃料車でレースに参戦し、2023年のスーパー耐久富士24時間レースでは、液体水素を燃料とした世界初のモデル「#32 ORC ROOKIE GR Corolla H2 Concept」(水素エンジンカローラ)を投入。2023年シーズンには、気体水素から液体水素へとチェンジした。これにより、水素の搭載量は7.3kgから10kgへと増加。結果として、航続距離は約54kmから約90kmへ、航続ラップ数は約12周から20周へと大幅に向上した。
しかし、気体から液体へのコンバートは容易ではない。新たなタンク設計や燃料システムの開発が求められた。「気体水素燃料を使用していた車体では、FCEVのMIRAIで培った技術を応用できましたが、液体水素の場合、タンクの設計はゼロからのスタートでした」と山本氏は語る。
圧力1MPa以下、タンクの形状変更により燃費が向上
燃料を液体水素へと変更するためには、燃料タンクだけでなく気化器の設計も必要だった。タンクの素材には液体水素による腐食を防ぐステンレスを選定し、その他の部品も国内メーカーから調達した。車両前部に搭載している燃料を気化させる機器関連には変更は必要なかったが、バルブや配管はトヨタのFCEV「MIRAI」の技術を応用した。それでも液体水素車の完成までには1年以上の時間を要した。