二刀流のエンジン|ガソリン/ハイブリッド両方に最適な2機種の「WA型」
ダイハツが新世代エンジンとして登場させたWA型エンジンは、現在ふたつの仕様を用意する。ガソリン車用とハイブリッド車用。これらふたつは機械的構成を大きく違えていない。高効率をひたすら追求していくとゴールはひとつになる──という例を見た思いである。
TEXT:小笠原凛子(Linko OGASAWARA)
PHOTO:山上博也(Hiroya YAMAGAMI)/MFi FIGURE:DAIHATSU
ダイハツ工業からストロングハイブリッドが出たとき、トヨタ自動車の「THS II」ではなく独自開発のシリーズハイブリッドシステム「e-SMART HYBRID」だと聞いて驚いた方もいるだろう。ダイハツの主戦場となる日本とASEANで環境規制により電動化が進むという想定の下、トヨタグループとしてAセグメントの台数拡大を担うハイブリッドシステムだ。
e-SMART HYBRIDに搭載する「WA-VEX型」はエンジン車としてもハイブリッド車(HEV)としても高効率な「真のエンジン」を目指す中で生まれた。WAエンジンに共通するのは、エンジンの寸法や骨格で決まる部分、つまり基本の素性によってベストな動力性能や燃費を実現するという方針だ。可変バルブタイミング機構(VVT)など可変機構はその次、という位置付けだ。
WA型のコンセプトは1.2ℓ、3気筒、ロングストローク。Aセグメントの車両の動力性能と燃費のバランスから、排気量を1.2ℓに決めた。冷却損失低減の意味から気筒数は3気筒でロングストローク……というようにして、素性が決まった。従来のエンジンと同等の体格に収まる範囲でのロングストロークとしたが、これはDNGAが「軽自動車を起点に上位のセグメントに上げていく」というコンセプトであるためだ。
ダイハツでもモデルベース開発(MBD)の活用が進んでおり、エンジン開発でもまずは目標のトルクや燃費を決めてから素性を逆算する格好で開発した。その素性のためにどんな燃焼の素性が、燃焼速度が必要かを求めた。
タンブルの乱れのエネルギーを最も高くできるようにした高タンブルストレートポートは、CAEで60~70種類の候補の中から選定した。上死点にピストンがくるときに一番エネルギーが高い状態で、そのまま燃焼に変えられるような仕様のポートにした。これはHEV用のWA-VEX型と、エンジン車用のWA-VE型で共通だ。