住友ゴム、高精度のタイヤ騒音予測手法を新開発。シミュレーションにより凹凸路面における性能予測において予測誤差1%を達成
住友ゴム工業は、実際の路面でのタイヤ騒音をこれまでより精度よく短期間で予測できるシミュレーション手法を新開発した。路面凹凸によるタイヤへの振動入力と路面の吸音特性を考慮することで特定のタイヤにおいて実測値と予測値の誤差は約1%※1となり予測精度が大幅に向上した。これにより今後、より静粛性能の高いタイヤ開発が可能になり、乗員の快適性が向上する。また、開発工数削減による納期短縮や試作の削減による省資源を図る事が期待される。
タイヤ騒音の予測シミュレーションを新開発
住友ゴムではタイヤパターン(タイヤ表面に刻まれる溝の形)が凹凸路面に接地する際に発生するパターンノイズ解析に関する特許を2014年に取得し、パターンデザインの開発にシミュレーションを活用してきた。
今回、従来の手法に加え、路面の凹凸がタイヤを振動させる事と凹凸がパターンノイズを吸音する事による音圧レベルの変化の要素を追加したシミュレーション手法が新開発(特許出願中)された。これにより実際のタイヤで発生するパターンノイズをより正確に予測する事が可能になる。また、その結果は、2024年自動車技術会秋季講演会にて「路面性状を考慮したタイヤパターンノイズ予測について」として学会発表された。
今回の特定のタイヤにおけるシミュレーション結果と実際のタイヤでの計測結果の比較検証では両者の音圧レベルの誤差は従来の約5%から約1%となり、より高い精度でシミュレーションできる事が確認された。また、従来は約1カ月を要していた計算期間が約1週間に短縮された。
この手法確立により今後、より静粛性能の高いタイヤ開発が可能になるとともに、試作タイヤによる実車テストの工数削減による開発納期の短縮や資源削減を図ることが期待される。また車両のモデルベース開発への対応も可能となる。
今後について
自動車の騒音規制の国際基準(UN R51-03 Phase3)が2024年から施行され、自動車騒音のさらなる低減が求められている。そして今後、普及が予想されるEVではエンジン音が発生しないため、タイヤから発生する音の寄与率が相対的に高くなる。このためタイヤの静粛性能の向上が今まで以上に求められている。
住友ゴムではこれまでもタイヤの静粛性能が追求されてきた。タイヤ内部の空気が共鳴して発生する「空洞共鳴音」を低減する独自技術の「サイレントコア」の採用や、タイヤと車両の相互の振動によって発生する音の低減に関するシミュレーション技術の開発などである。また、走行する車両のタイヤ付近の空力性能を最適化するタイヤ形状の開発においても独自のシミュレーション技術が駆使されている。
今後もシミュレーション技術を進化させ、EVタイヤなどの高機能タイヤ、モデルベース開発など多様なユーザーニーズに迅速に対応するとともに資源の有効活用により、地球環境に優しいタイヤ開発が推進される。
※1 実際のタイヤによる計測値とシミュレーション予測値の計測全周波数における音圧レベルの総和での比較
【試験条件】
●タイヤサイズ:265/55R20(テスト用タイヤ)
●空気圧(kpa):230
●路面:ISO模擬路面
●場所:住友ゴム工業 タイヤテクニカルセンター
●試験方法:ドラム試験機上でタイヤを転動させ、タイヤ接地入端付近に接地したマイクにてタイヤ放射音を計測
※2 設計開発活動において、実物の試作部品ではなくコンピュータ上で再現した「モデル」にその軸足を置いて活動を進めることで、性能構想、設計、部品試作やテストにかかる時間と手間を大幅に短縮、削減し効率的に開発を行う開発スタイル。