エンジンテクノロジー超基礎講座043｜日産キャラバンのディーゼルエンジン［YD25DDTI］型式は同じ、中身は別物に

日産は2012年6月、キャラバンのフルモデルチェンジに伴い、これまでの3ℓディーゼルエンジンを2.5ℓへと置きかえた。先代（E25型）に搭載されていたエンジンはZD30。DOHC4バルブにコモンレールなど近代的な装備が盛り込まれた4気筒エンジンだが、燃費面で改善の余地があり2.5ℓへのダウンサイジングという手法が採られた。

新たに選択されたエンジンはYD25DDTi。1998年にプレサージュに搭載されて以来、十数年を経ていたが、日産独自の予混合燃焼技術であるMK（Modulated Kinetics）燃焼の採用や、ロングストローク設定など、エネルギー効率の高さという意味において非常に高いポテンシャルを秘めていた。ディーゼルにおいて成熟した市場を持つヨーロッパで高い評価を得ていたエンジンでもある。

燃費性能の向上と環境性能追求のためのダウンサイジングにターボは必須だったが、商用車にふさわしいパワー／トルク特性の確保と環境性能の向上を図るため、サイズなどの仕様を変更（ボルグワーナー製の可変ノズルターボを採用）した。その他シリンダーヘッドにも大幅に手を入れるなど、徹底的なブラッシュアップが図られている。

従来のYD25DDTiをより商用車向きとしながら燃費や環境性能を向上するべく、タービンなどに変更を加えた結果、最高出力は95kW（129ps）に抑えられているが商用車の実用シーンでストレスなく使えるトルク特性に仕上げられている。わずか1400rpmで最大トルクを発生し、そのまま2000rpmまでフラットに最大トルクが続く。

前モデルに搭載されていた3ℓディーゼルのZD30から排気量を縮小したにもかかわらず、実用域においては圧倒的といえるトルクを発生。356Nm（36.3kg-m）はクラストップの数値だった。