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エンジンテクノロジー超基礎講座007|スカベンジポンプ ドライサンプ特有の高圧オイル吸引装置

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エンジンテクノロジー超基礎講座007|スカベンジポンプ ドライサンプ特有の高圧オイル吸引装置
ドライサンプのエンジン | 巨大なオイルタンクが外観上の特徴だが、市販車ではある程度オイルパンにタンク機能を持たせることが多い

スカベンジポンプは、自動車用としてはドライサンプのエンジンのためのオイルポンプのことをいう。なぜ、スカベンジポンプが必要なのか?

広義のスカベンジポンプとは流体を吸い出す圧力発生装置である。2ストローク・ディーゼルエンジンでは、掃気という行程のために排気をシリンダー圧力以外の力で強制的に吸い出すスカベンジポンプを用いるが、一般的に自動車用としてはドライサンプエンジン用の専用オイルポンプを指す。

乗用車エンジンではクランクケース下部にエンジンオイル溜まり(オイルパン)を設けている(ウェットサンプ)。エンジンオイルの全量はそこに溜められ、クランクシャフトの回転による飛沫拡散とクランクケース内の圧力変化である程度オイルを循環させることができるため、オイル圧送ポンプはそれほどの容量を必要としない。またエンジン上部にいったオイルは自重で自然にオイルパンに戻り、その経路はシリンダーブロック内で完結するため構造が簡易だ。

ウェットサンプのエンジンの場合

ウェットサンプのエンジンの場合 | オイル循環のための機能と装置はすべてシリンダーブロック内に収まる。オイルパンの高さ分クランク中心が高くなる。

しかし攪拌されたオイルに空気の泡が発生してオイル供給が不安定になったり、コーナリングGによってオイルパン内のオイルが水平を保てなくなった結果、オイル供給に不備を来す等の問題点がある。また、数リットルのオイルを収めるために地上高が嵩み、クランクセンターが高くなって重心高が上がる。

それを解消するためにエンジン外部に専用のオイルタンクを設け、高圧のスカベンジポンプを使って強制循環させるのがドライサンプである。市販車ではウェットサンプに比べて薄型のオイルパンとし、そこに複数のスカベンジポンプを仕込む「セミドライサンプ」とするケースが多い。

ウェットサンプのエンジン
ドライサンプのエンジン

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