エンジンテクノロジー超基礎講座031|クランクシャフトの構造をまとめてみた:構造と各部の役目
エンジンの運動を出力する軸であり、シリンダーヘッド&燃焼室から発生したエネルギーを最終的に動力として取り出すための扇の要がクランクシャフト。まさにエンジンの“腰“である。
ピストンの往復運動はコンロッドによって回転運動に変換され、クランクシャフトに伝えられる。エンジンの正味出力を計測する場合はクランクシャフト軸で計測することからもわかるように、原動機の核となる部品である。
■ メインシャフト:写真では、こちらがメインプーリを装着する側。回り止めのためのキー溝が見える。逆側はフライホイールをとめるねじ部を設けるために大きな円形ブロック状になっている。ともに、オイルシールを介してエンジンの外側に飛び出る部位である。
■ カウンターウェイト:クランクピンと逆側に設けるおもり。ピストン/クランクの上下運動にともなう一次振動をキャンセルさせる。クランクアームすべてにウェイトが備わるのがフルカウンター、どちらか片方を省略するのがハーフカウンター構造で、後者は回転バランスに元々優れる直列6気筒などに用いられる。
■ クランクピン:コンロッドのビッグエンド側をつなぐ部位。ベアリングメタルを介してボルト締結する。V型エンジンの場合、対向するバンクのシリンダーとクランクピンを共有するため、ご覧のように幅が広い。バンクオフセットを少しでも解消するために、クランク中心とメタル中心を一致させないケースもある。
■ メインジャーナル:シリンダーブロック側の受けに載せる部位。もう片側はベアリングキャップで留め、ボルトで締結して固定する。黒く開いているのはオイル供給のための穴。キャップ部からオイルを入れ、遠心力を用いてクランクピンへ送る。斜めにドリルホールを通すので、表面に見える部分が楕円というわけだ。写真の場合、いちばん奥は隠れて見えていない。
シリンダーの数や形式によって形状は異なるが、コンロッドを結合するピンと、シリンダーとクランクケースに支持されるジャーナル部分がコの字型に成形されているため、回転によってねじり応力を受ける。従って、剛性を高めないと振動の発生原因となり回転も上げられない。全長が長くなる直列エンジンでは6気筒が限界とされ、多気筒化には構造は複雑でも全長が短く剛性の確保できるV型がセオリーとなる。
V型では隣り合うコンロッドでピンを共用するが、V6では理想バンク角である120°以外では点火間隔を均等にするためにピンをオフセットする。180°Vと水平対向ではクランクの形状が全く異なることに注意。