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フィアット(汗)ジュリア購入記(前編)

福野礼一郎のTOKYO中古車研究所™ 第153回

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フィアット(汗)ジュリア購入記(前編)

なにやら大袈裟なタイトルがついていますが、これは私=福野礼一郎が1993年から2012年まで「CarEx」「くるまにあ」「特選外車情報エフロード」の自動車雑誌3誌で計152回連載し、当時多くの方に読んでいただいた連載記事のタイトルです。Topper編集部の依頼で11年ぶりに名称復活することになりましたが、今回の記事テーマでお察しの通り、内容的には単なる「私的ブログ」のようなもので、Topperの中では浮いたコンテンツだと思います。仕方なくも恥ずかしながら、今週から始めます。よろしくお願いいたします。
TEXT&PHOTO:福野礼一郎(Rei-ichiro FUKUNO)

(本文文字量4400字) *通常は雑誌1ページで2000〜2500字

話は2022年夏に遡ります。すみません。

私は幼稚園に入る前年の1960年4月から63年間、東京都千代田区に住んできた老人ですが、近隣のマンション街を縦横に走る片側1車線の生活道路の区道は、マンションが次々に新築されるたびに掘り返して電気工事などを行うこともあって、舗装状況は常時劣悪です。つまりクルマのインプレには絶好の立地で、とりわけ環状2号線内堀通りと大妻通りに挟まれた通称「麹町警察通り(南→北ルート)」は、普通の道路なら乗り心地のいいクルマでも思わず本性をさらしてしまう魔の道路.......いや「魔法の道路」です。「モーターファン・イラストレーテッド」誌の連載「ニューカー二番搾り」では、この道を11年間100台以上のクルマで走ってきましたが、センチュリー、レクサスLS、マツダCX-60など、多くの高級車がここで馬脚を表して低評価に泣きました。逆にプジョー208のようにここで男を上げたクルマもあります。ジュリアもその1台です。

2015年6月の購入以来6年間で2万2000kmほど走った愛車シトロエンDS5のリヤから、近所の道を走るたびに、どたん、ずどん、と異音が聞こえるようになったのは2021年の夏頃からだったと思います。必ず上下動にともなって生じる音で、ボディ構造に直接響くようなダイレクトな感じではなく少しこもっています。買った当時はこんな異音はしなかったので、設計起因ではありません。下回りをぶつけた記憶もないのでサスの接触も考えられません。ブッシュなどのゴム類の破損か、テールゲートのガタか、マフラーの取り付けか、とにかく経年の劣化による現象であることは確かです。どこに行く場合でも私は近所のこの「乗り心地評価路」を通過しなければならないわけですから、自分のクルマに乗るたびにちょっと憂鬱になってきました。

著者
福野礼一郎
自動車評論家

東京都生まれ。自動車評論家。自動車の特質を慣例や風評に頼らず、材質や構造から冷静に分析し論評。自動車に限らない機械に対する旺盛な知識欲が緻密な取材を呼び、積み重ねてきた経験と相乗し、独自の世界を築くに至っている。著書は『クルマはかくして作られる』シリーズ(二玄社、カーグラフィック)、『スポーツカー論』『人とものの讃歌』(三栄)など多数。

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