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エンジンテクノロジー超基礎講座048|マツダのSKYACTIV-D 1.5とはどのようなエンジンか

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エンジンテクノロジー超基礎講座048|マツダのSKYACTIV-D 1.5とはどのようなエンジンか

2012年1月から14年5月までの29カ月間にマツダは、日本国内で約9万3000台のディーゼル車を販売した。 これはスカイアクティブ2.2D一機種での販売実績だが、その後登場した1.5ℓ版も、これに負けず劣らず技術的な見所が多い。
TEXT:牧野茂雄(MAKINO Shigeo)

当時のデミオ(現在のマツダ2)に搭載された1.5ℓディーゼルエンジン(DE)は、エンジンとしての素性は2.2と同じであり、高効率と低公害を追求した新世代クリーンDEである。ただし、排気量が1.5ℓであることと、搭載モデルの車両価格が2.2ℓに比べて低いことから、1.5ℓなりの最適化設計が注がれている。

大きな変化は2.2のボア86mmに対し76mmになったことへの対策である。気筒容積に対してシリンダー壁面/燃焼室天井/ピストン冠面合計の比率が大きい。つまり、燃焼ガスの熱がこれら表面から冷却水へと奪われる冷却損失の機会が増えた。これが熱効率を阻害する。そこで圧縮比を2.2ℓの14から1.5ℓでは14.8へと高め、吸入した空気の圧縮端(上死点)温度を高くしている。それでも一般的な乗用車用DEに比べれば低く、コンロッドやブロックなど燃焼圧を受け止める部分の強度を引き下げることができている点は2.2ℓの思想のままだ。

ターボチャージャー(T/C)は2.2の2基から1基に減らされた。気筒容積が減り必要な吸気量が減ったためだが、当然、コスト面で厳しいという理由もあるだろう。タービンおよびコンプレッサーの径は発表されていないが、目測で2.2ℓの小さいほうのT/Cより少し大きい程度だ。とは言え、これでは排気ボリュームが小さい低回転域でタービン羽根に当たる排気の勢いが削がれることになる。そこで1.5ℓDEはコンプレッサー側にVG(可変ジオメトリー)ベーンを持ったタイプが採用された。ハウジングの刻印を見れば三菱重工製である。

このVG機構は、エンジンが冷えている状態で始動したときの燃焼安定のためにも使用される。できるかぎり短時間にエンジンを温めないと排ガス中の有害成分が多く排出される。この点はガソリンエンジン(GE)でも同様であり、設計段階で苦労するところだ。マツダは、エンジン冷却水温が低い状態での始動時にはVG機構を使ってベーンを全閉とし、タービン内に導いた排ガスが燃焼室に逆流するようにした。いわゆる内部EGR(排ガス再循環)である。2.2DEでは排気バルブの可変機構を使って同じことをやっていたが、1.5ではVGを利用する。

運転中のEGRのかけ方も変わった。エンジンのカットモデルを見ると、排気の取り回しが2.2とはずいぶん違う。外気がT/Cのコンプレッサーに入る手前に合流する通路がある。2.2では、排気マニフォールド直後の排気温度と圧力が高い場所から排気を取り出して吸気側に導くハイプレッシャーEGR方式だった。1.5ではこの通路は残したまま、T/Cのタービンを通過しDPFと酸化触媒も通過したあとの低温低圧の排気を吸気に導くロープレッシャーEGRを併用している。

EGRは燃えカスの不活性ガス、つまり酸素を含まず燃焼には寄与しないガスを吸気に混ぜることで燃焼温度上昇を抑える手段であり、近年はGEでもDEでも必須だ。GEではスロットルバルブ開度が小さい領域でポンプ損失を減らすという目的でも利用される。ただし、EGRをかけすぎるとレスポンスが悪くなる。そこで、T/Cを作動させて勢いも温度も削がれた燃えカスをEGRに使用し、レスポンス悪化をできるだけ抑えるという方法が考案された。ロー/ハイを上手にミックスさせるEGRは最新の流行であり、マツダはこれを1.5DEで使った。

...と、技術説明会で公表された概略とエンジンのカットモデルを観察して個人的に推測した部分だけでも、多くの見所があった。250Nmという最大トルクを1400rpmという低回転で得る実力もある。アイドリングからアクセルペダルを踏み加えていく段階ですでに過給圧が発生していることを物語る数字だ。さらに、このDEが日本市場で必須のステップAT(6速)と組み合わされる。

いや、それ以上に筒内直噴DEが持つ「燃料噴射量とタイミングで自在にトルクを作り出す」というドライバビリティの良さである。2.2DEは常に改良が加えられ、DPF再生時の燃料消費が確実に減った。過渡領域のレスポンスもさらに良くなった。DEを作り続けることでマツダは学習し、どんどん攻めてきているのが分かった。

著者
牧野 茂雄
テクニカルライター

1958年東京生まれ。新聞記者、雑誌編集長を経てフリーに。技術解説から企業経営、行政まで幅広く自動車産業界を取材してきた。中国やシンガポールなどの海外媒体にも寄稿。オーディオ誌「ステレオ時代」主筆としてオーディオ・音楽関係の執筆にも携わる。

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