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神戸製鋼所が燃料電池セパレーター用NCチタンで市村産業賞 功績賞を受賞

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神戸製鋼所が燃料電池セパレーター用NCチタンで市村産業賞 功績賞を受賞

神戸製鋼所は、市村清新技術財団(※1)主催の第55回(令和4年度)市村賞において、同社の燃料電池セパレーター用チタン圧延材であるNC(Nano-Carbon composite coat)チタンが、トヨタ自動車(本社:愛知県豊田市)とともに市村産業賞 功績賞を受賞したことを発表した。NCチタンは、同社がトヨタと共同で世界で初めて量産化に成功したもの。

市村産業賞の概要

市村賞は、日本の科学技術の進歩や産業の発展に顕著な成果をあげ、産業分野あるいは学術分野の進展に多大な貢献をした個人またはグループを表彰するもの。市村産業賞、市村学術賞、市村地球環境産業賞、市村地球環境学術賞の4分野が設けられている。市村産業賞は、優れた国産技術を開発し、産業分野の発展に貢献・功績のあった技術開発者を表彰するもの。

受賞技術の概要

市村産業賞 功績賞
受賞テーマ:水素社会実現に貢献する燃料電池向け表面処理チタン材の開発
神戸製鋼所受賞者:
・技術開発本部 材料研究所 研究首席 佐藤 俊樹氏
・素形材事業部門 チタンユニット チタン工場 製造部 室長 淺 勇輔氏
共同受賞者:
・トヨタ自動車 ZEV(FC事業)商用ZEV製品開発部 主幹 萱嶋 浩一 氏
(所属は申請時点)

開発技術の内容

1.開発の背景

カーボンニュートラル社会実現のため、燃料電池自動車(FCEV)の普及が求められており、基幹モジュールである燃料電池を大量に供給する必要がある。燃料電池1台に対して、その主要部品であるセパレーターは数百枚搭載されるが、既存セパレータは生産性の低さが課題で燃料電池の大量供給の妨げとなっていた。

2.技術の概要

図1:NCチタンのコンセプト(断面イメージ図)
図1:NCチタンのコンセプト(断面イメージ図)

神戸製鋼所はチタン表面の酸化皮膜中に導電性のカーボン粒子を分散含有することで、ナノメートルオーダーの緻密な皮膜”Nano-Carbon composite coat”(図1)を開発した。さらに、表面処理の生産性を高めるコイル状チタン材への連続表面処理技術も確立した。

NCチタンはプレス成形でも皮膜が剥離せず、燃料電池内部の酸性腐食環境でも表面導電性を維持できるのが特徴である。

3.開発技術の特長

図2:NCチタンと燃料電池セパレーターの外観
図2:NCチタンと燃料電池セパレーターの外観

既存セパレーターは、切板状態のセパレーターを1枚ずつ表面処理する必要があり生産性に課題があった。神戸製鋼所は新技術(図2)により、表面処理の高速化・高効率化に成功。プレス成形後の表面処理工程を省略できる、プレコート型セパレーターの実用化を世界で初めて実現した。セパレーターの生産性が大幅に改善され、燃料電池の大量供給が可能となった。

NCチタンは2020年に量産を開始し、同年12月にトヨタ自動車が発売したFCEV“MIRAI”に独占的に供給されている。今後は商用車や鉄道、船舶等への適用が期待される。

※1:市村清新技術財団
※2:参考
世界初「NC(Nano-Carbon composite coat)チタン」の開発および量産化に成功(2021年2月24日)
燃料電池セパレータ用「NCチタン」が一般財団法人素形材センター 素形材産業技術賞「経済産業大臣賞」を受賞(2021年11月12日)

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