市販モデルの商品でもべリングを開始:Project μ ブレーキキット【東京オートサロン2024】
「タイヤがついているものならブレーキの対応が可能」
Project μの経営企画室 森 一与利氏は、話をしながら自社のブレーキキットに絶対の自信を持っているように見えた。数々のモータースポーツでも採用された実績を持つ同社のブレーキキットだが、今年から徐々にある取り組みを始めるという。
[西ホール1]
TEXT&PHOTO 久保田幹也
街乗りからモータースポーツ、カートまで対応可能
Project μのブレーキキットは、あらゆる場所で採用されている。街乗りで使えるようなものはもちろん、モータースポーツで使用する巨大なブレーキシューも東京オートサロン2024では出展されていた。
今回は展示用として持ってきたというが、実際にはレーシングチームから直接依頼がないと外に出すことはないという。というのも、モータースポーツ用のブレーキはセッティングをしっかりしなければ、大事故につながりかねないためだ。セッティングが整って初めて、ブレーキキットが効果を発揮するという。
ほかにも四駆用のものや「TONY KART」と呼ばれるカート専用のブレーキも展示。ドリフト専用のブレーキシューなども存在しており、ブレーキの世界の奥深さを実感できる展示となっていた。
その奥深い世界を網羅できていることからもわかるが、日本のみならず世界からの評価も高い。海外のレーシングチームからの依頼はもちろんのこと、スーパーGT300のチームなどからも依頼がくる。摩擦係数を意味する「μ」を社名に据えているだけあり、ブレーキの評価は非常に高いといえるだろう。
市販のブレーキキットの一部でべリングを開始
そんなProject μでは、今年から市販向けのブレーキキットのローターに「べリング」と呼ばれる工程を始めたとのこと。展示はなく、一部の商品に限定されるが、新品のブレーキに焼きを入れる工程を追加するのだ。
焼きを入れる理由としては、ブレーキパッドの当たり付けがある。新品のブレーキローターとパッドは当たりができるまでに時間がかかり、ブレーキの効きに若干の違いが出る。モータースポーツだとそれがロスタイムとなってしまうことも珍しくないという。
もともとProject μでは、モータースポーツ用のブレーキキットでべリングをしていたが、今回、街乗り用のブレーキキットでも同じことを一部の商品で始めることになったと森氏は語る。
べリングでは、オーブンのような機械を使って焼きを入れることもあるが、Project μは本物のブレーキを使用してべリングを実施。こうすることでブレーキの当たりがよくなるのだ。ただ、欠点として見た目が中古品のように見えてしまうことがあり、森氏も実際にお客様から「中古が届いた」といわれたことがあるそうだ。
とはいえ、プロユースのブレーキと同じ加工を始めるというProject μの方針は非常に興味深い。取材時点では全商品で実施する予定ではないとのことだが、今後、べリング済みのブレーキキットが数多く登場する可能性は高い。レース用だけではなく街乗り用でも、ブレーキのプロとしてのきめの細やかさを見せつける。