豊田自動織機、エンジンの国内排出ガス認証不正問題について調査結果を公表
豊田自動織機は1月29日、フォークリフト、建設機械用エンジンの国内排出ガス認証不正について、調査を委託した特別調査委員会より報告書を受領。フォークリフト、建設機械用の旧型も含めた産業車両用エンジン、および、新たに一部の自動車用エンジンの法規違反が明らかになったと発表した。
同社は、2023年3月17日に、現行機種のフォークリフト、建設機械用エンジンの排出ガス性能に関する国内認証での法規違反について公表し、対象機種の出荷を停止するとともに、フォークリフトに関しリコール対応等を進めてきた。
特別調査委員会による調査の結果、トヨタ自動車が認証申請手続き用に豊田自動織機に委託した自動車用ディーゼルエンジン3機種の出力試験においても、違反行為があったことが判明。出力試験時に、量産用とは異なるソフトを使ったECUを用いてエンジンの出力性能を測定し、測定する数値が安定するようにバラつきを抑えて報告する行為が行われていた。該当するエンジンが搭載された車両は、ランドクルーザープラド、ハイエース、グランエース、ボンゴブローニイバン(マツダ)、ダイナ、デュトロ(日野自動車)、ハイラックス(欧州、中東、アジア、アフリカ向け)、フォーチュナー、ハイラックス(日本向け)、イノーバ、ランドクルーザー 300、LX500dの10車種(うち日本6車種)となる。
判明した事項の詳細は、以下の通り。
産業車両用エンジン
2023年3月に法規違反を確認し、出荷を停止しているフォークリフト用エンジン現行3機種および建設機械用エンジン現行1機種に加え、今回の調査で、フォークリフト用エンジン6機種(内5機種は旧型)および建設機械用エンジン1機種(旧型)の違反行為が判明。出荷停止中の建設機械用エンジン現行1機種について、排出ガス規制値超過も判明した。
●産業車両用エンジンの判明概要
フォークリフト用および建設機械用エンジンでは、認証取得時の排出ガスの劣化耐久試験において、実測値と異なるデータの使用や試験中の部品交換などの行為があった。工場での量産品の抜き取り検査時においては、規程と異なる頻度での実施や量産品と異なる制御ソフトの使用などの行為が判明した。
●産業車両用エンジンの違反行為
自動車用エンジン
豊田自動織機がトヨタから一部開発を受託している自動車用エンジン3種(1GD、2GD、F33A)については、トヨタならびに日野自動車が自動車型式指定の申請手続きを行っている。
その申請手続きの中で、出力試験を豊田自動織機が担当し、必要なデータを提出しているが、試験の際、燃料噴射量を調整し、出力・トルクカーブについて、見栄えの良いデータにするといった行為が判明した。
出力の性能については、抜き取り検査で出荷基準値を満たしていることを確認しているという。
●自動車用エンジンの判明概要
豊田自動織機は、判明した違反行為に至った主な原因について、産業車両用エンジンに関しては「経営としての法規遵守に関する危機管理意識の不足」「自立した行動様式の弱さ」「産業車両用エンジンの軽視」「事業部制の弊害をカバーするための経営陣の取り組み不足」「不合理な開発スケジュール設定、管理者層の機能不全」、自動車用エンジンに関しては「出力試験の委託元であるトヨタ自動車とのコミュニケーション不足」を挙げ、全体としては「コンプライアンス意識の欠如」「法規を遵守しつつ、開発生産を進めるために必要な組織・体制の不備」を原因として認識していると説明した。
豊田自動織機は今回の件について「経営としての責任を重く受け止めている」と述べ、「法規遵守のための意識改革、体制・組織の再生を経営としての最優先課題として取り組んでいく」とコメントした。今回の調査結果を踏まえ、すでに出荷停止しているエンジンに加え、新たに法規違反が判明したフォークリフト用エンジン、自動車用エンジン、および当該エンジンを搭載するフォークリフトの出荷を停止。規制値超過の判明した建設機械用1KDについては、今後、納入先および監督官庁と協議の上、必要な措置を講じていく。
トヨタは、該当エンジンが搭載された車両について、出荷を一旦停止することを決定。該当するエンジンと車両については、工場で生産した量産品を改めて検証し、エンジン出力の規準を満たしているため、ただちに使用を停止する必要はないと説明している。
国土交通省は今回の報告を受け、豊田自動織機に対し、同省が基準適合性を確認するまで現行エンジンの出荷を停止するよう指示した。今後、同社へ立入検査を行い、不正行為の事実関係等の確認を行うほか、同省および自動車技術総合機構において、全ての現行エンジンの基準適合性について、技術的に検証を行うと発表。立入検査および基準適合性の検証結果を踏まえ、道路運送車両法等に基づき厳正に対処する方針。