米国EV市場に吹く逆風、光明は見えるか|加速するHV、積み上がるEV在庫
アメリカにおける2023年の新車販売は1530万台と例年並みが予想される中、EVは前年比50%増、史上初の100万台超え、さらに新車販売総数の約8%を占めるまでに急成長する見込みとされている。
バイデン政権も30年までに新車販売の50%をEVにする目標を掲げており、多額の補助金でEV普及を後押しする構えだ。
好調に見えるアメリカ。しかし過去3年ほど成長が著しかった高額EVの低迷に直面し、解決策を模索しているようだ。
ILLUSTRATION:Shutterstock
減速するEV、加速するHV、積み上がるEV在庫
アメリカでは21年のEVの年間販売台数が前年の32万台から66万台へと約2倍に増加し、22年にはさらに98万台へと増加させた。まさにEV景気だ。
ところが問題が発生する。
EV販売は22年6月には前年同月比90%増という非常に高い伸び率を示していたが、23年6月には同30%増、11月には同35%増と伸びが鈍化していく。
高額EVを所有できる高所得層の需要が一巡し、ほぼ頭打ち状態になってしまったのだろうか。
ディーラーでは人気の内燃機関車の在庫が2ヵ月分を切る一方で、EV新車在庫が積み上がり始めてしまう。米自動車業界分析会社のコックス・オートモーティブのEV新車在庫調査によると、23年4~6月期の平均在庫台数は9万台超となっており、前年同期の約2万台に対し大きく増加してしまっている。
平均在庫日数も92,2日(前年同期は35,8日)に。その後も同社の調査によれば7月初旬の平均在庫数が111日を記録しているようだ。10月初旬はやや落ち着いて97日に低下したが、12月初旬は実に114日にまで上昇。依然としてEV在庫に対する課題は解消できていない状態だ。
結果として「22年にはEVに関して多大な希望を感じられたが、今や熱は冷めた」という書簡がディーラーからバイデン大統領に送られるなど、EVを取り巻く現状は厳しいことが分かる。また「大幅な値引きや、メーカーが用意した特典、最大7500ドル(約110万円)の連邦政府による補助金などがあるにも関わらず、ユーザーがEVを選ばず、不良在庫化している」とも訴える。
しかし、消費者のEVシフトが停滞する傍、HVの販売が急速に伸長しているようだ。
消費者が価格的にもお手頃で環境にも優しいHVを好む傾向は明確化したのかもしれない。米調査会社グローバルデータは23年のHVの販売台数はEVを上回ると予想した程だ。
HVのプリウスが入荷から1週間もしないうちに販売されるが、トヨタ製EVであるbZ4Xは最大200日以上動かないこともあるそうだ。