NTN、e-Axle向けに電食対策を施した導電軸受を開発。電食対策品のラインナップを拡充し「人とくるまのテクノロジー展 2024」にも出展
NTNは、電気自動車(EV)の駆動源であるe-Axle向け軸受として、導電性に優れたゴムシールの採用により電食対策を施した導電軸受を開発したことを発表した。
電食について
軸受内部に電流が通過した際にスパークが発生して金属組織の溶融が進行すると縞状の凹凸などの損傷(電食)につながることから、モータ支持用軸受には電食対策が求められている。今回の新製品はモータ内の循環電流による電食対策のための既存の絶縁アイテムと合わせて、EDM※電流による電食対策を実施。e-Axle用軸受特有の課題となる電食対策品のラインアップ拡充により、e-Axleのさらなる高性能化と普及に貢献する。
※Electrostatic Discharge Machining(放電加工)の略称
モータ支持用軸受で対策すべき電流には、モータ軸を通過するEDM電流とモータ内を循環する循環電流の2種類がある。EDM電流はモータ運転時にモータ軸に電圧変動が生じることにより発生する電流で、循環電流はインバータ制御のために電源のオン・オフが繰り返された際にモータ内に電流が漏れ出すことにより発生する。これらの電流が軸受の軌道面に通電すると電食の発生につながる。
循環電流の対策には、軌道面への通電そのものを抑制する絶縁アイテムが有効とされる。一方、モータ支持用軸受を絶縁しても、EDM電流は減速機側に流れて減速機の軸受を損傷させる可能性がある。そこで、EDM電流をモータのハウジング側に流すために、導電アイテムを併用することが有効とされている。
導電軸受について
本開発品は導電性に優れたゴムシールを適用し、電流がゴムシールを介して通ることにより、軸受軌道面への通電による電食の発生を低減させる。軸受に導電ブラシなどの別の導電部品を取り付ける対策方法に比べて、軸受の構成部品そのものに導電性を持たせることで、省スペース性に優れている。
NTNはこれまで循環電流対策として、絶縁体であるセラミック製の転動体を使用した軸受や、軸受の外輪外径や幅面に絶縁被膜加工を施した「絶縁被膜付き軸受」、軸受の外輪外径面および幅面に樹脂絶縁層を射出成形した「樹脂モールド絶縁軸受」などの絶縁アイテムを開発している。今回、EDM電流を対策する導電アイテムを開発したことで、e-Axle用軸受として対策が求められるすべての電流への対応が可能となる。
なお、5月22日~24日にパシフィコ横浜で開催される「人とくるまのテクノロジー展 2024 YOKOHAMA」にて、本開発品である導電軸受や「樹脂モールド絶縁軸受」などの耐電食軸受が出展される。