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EV不況の足音に挑むホンダ、2040年までの脱エンジンに向けた強気の事業展開、積極投資で活路を見出せるか

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EV不況の足音に挑むホンダ、2040年までの脱エンジンに向けた強気の事業展開、積極投資で活路を見出せるか
出典元: Colin Temple / Shutterstock.com

ホンダは日本勢で唯一、世界販売の100%をZEVとする目標時期を定めている。ホンダが「脱エンジン」を発表したのは2021年4月のことだった。2040年までに新車販売をすべてEVとFCVにする計画だ。

2023年以降にEV市場の成長が減速し、各社各国暗雲立ち込める中、EVシフトに傾注してきた欧米勢が戦略を修正してきているが、ホンダはこの方針を堅持する。

GMとの共同プロジェクト頓挫を経験しながらも強気の投資、様々なビジネスへの参画、日産とのタッグ形成など歩みを進めるホンダは今まさに正念場だ。その動向を眺めたい。

注力プロジェクト中止、人件費削減、生産台数低下などに直面したホンダ。苦境においても新車発表、投資額増加など強気な攻勢

2023年、提携するアメリカのゼネラル・モーターズ(GM)と共同開発中だった量販価格帯の中小型EVについて商品化を断念した。

両社の工場を活用して数百万台規模の生産体制を構築し、スケールメリットを創出する狙いだったが、商品性と価格のバランスを取ることが難しくなったことがその原因だろう。

当プロジェクトは2030年までにEVを世界で30車種投入し、EV販売を年間200万台にまで引き上げる計画の一翼を担う予定だった。専用プラットフォーム(車台)として他地域への展開も見越していたために、中止の影響は北米事業だけに留まらない。

ホンダの不調は多方面にも波及する。

中国では広州汽車集団との合弁会社広汽ホンダの工場で働く派遣社員を約900人削減することも決定された。これは全体の7%に当たり、対象者には金銭補償も行う。

さらに同社の生産台数は2023年10月時点で前年比2割近く減少しているが、あくまで生産調整を行っているとした。

しかしホンダは攻勢に出る。5月16日の年次会見で、2030年までのEVの投入計画も発表。グローバルでは2026年に発売する0シリーズの3車種を皮切りに、2030年までに7車種を投入する構えだ。

中国ではこれらに加え、2027年までに10車種のEVを投入する計画。現行の中国向けEVシリーズe:Nの4車種に加え、新たに立ち上げる中国専用EVシリーズ「燁(Ye、イエ)」から2027年までに6車種を発売する。

加えて電動化、知能化への投資額を従来計画の5兆円から10兆円に引き上げた。

足元ではEV市場の成長が減速し、ホンダは苦戦を強いられているように見える。諸々の積極的な姿勢には、この数年といった短期間ではなくもっと長期的な視点で見た際にEVシフトは着実に進んでいくとした上での判断が垣間見える。

2025年3月期では研究開発費に過去最大となる1兆1,900億円の投資。EV、HEVの開発をさらに強化

2024年5月10日に開いた2024年3月期通期の連結決算(国際会計基準)説明会によれば、ホンダは2025年3月期の研究開発費として過去最大となる1兆1900億円を投じる計画だ。

この研究開発費の大部分は、EVや知能化技術に使用されると見込まれる。また、2020年代後半以降のEV開発の原資を生み出すであろうHEVへも積極的に投資を行う。HEVを中心とするICEモデルにも注力するとし、今後約3年間はHEVへの研究開発投資を続けることを示唆した。

HEVの収益性は、現状では基本的にはICE車とほぼ同等まで高められている。

中型セダン「アコード(2023年モデル)」のハイブリッド機構のシステムコストは、先代2018年モデルの同機構のコストに比べて25%削減されている。HEVを含むICE搭載車全体においては、2021年に発売した中型車「シビック」から導入された車両の開発・生産手法「ホンダ・アーキテクチャー」も収益性の向上に寄与する。

同手法によって、基幹車種のアコードやシビック、CR-Vなどで部品の共用率を高め、開発や製造のコスト削減に貢献している。

北米や欧州市場でEVの需要が鈍化するのとは対照的に、HEV市場が拡大していることも追い風となるだろう。性能と収益性を向上させることでホンダは活路を見出せるはずだ。

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