いすゞ、国内初BEVフルフラット路線バス「エルガEV」の一部車型を先行発売
いすゞ自動車は5月28日、バッテリーEV(BEV)路線バス「エルガEV」の一部車型(ショートホイールベース・都市型モデル)を発売した。
いすゞは、決められたルートを走行することの多い路線バスでは、BEVがカーボンニュートラル対応の有力な選択肢の一つであると考え、長年の商品開発で培った実績を元に、乗客・ドライバー・道路事情に配慮したBEV路線バスを開発。今回、2023年10~11月に開催された「JAPAN MOBILITY SHOW 2023(ジャパンモビリティショー)」で世界初公開された新型車のうち、一部モデルを先行して販売開始した。
同モデルは、リアアクスルの左右それぞれにモーターを内蔵した「インアクスルモーター」の採用により、フロアを低床化。バッテリーパックを屋根上と車体後部の床下に配置したことで、フロアレイアウトの自由度が高まり、車内前部の乗降口から最後部座席まで段差のないバリアフリー化を実現した。乗客の利便性および安全性が向上し、BEVがもたらすスムーズな加速感と低騒音・低振動も相まって快適性も向上している。
従来のディーゼルエンジンモデル「エルガ」と同等の動力性能を確保しながら、路線バスで使用される航続距離をカバー(※1)。国内主流の350Vで充電できる高電圧バッテリーを採用し、3.2時間(※2)で20%の残量から80%まで充電ができる。災害時には救援車として、エルガEVから電力を取り出す外部給電機器と接続し、家電機器などに電力供給ができる。
安全運行のため、エルガと親和性のある運転席周辺のメーター機器類を採用し、BEVでありながらクリープ走行を可能にするなど、従来と同等の操作性を確保することで、一日にさまざまなバスを乗り換えて運転するドライバーの安全性と負荷軽減に配慮した。
先進安全機能では、「ドライバーステータスモニター」でドライバー異常を検知して「ドライバー異常時対応システム」が作動すると、車両が停止した後に自動でパーキングブレーキが作動し、坂道などでも安全に車両を停止させる機能を国内路線バスで初めて採用した。自車前方の歩行者・自転車を検知し、ドライバーへ通知するフロントブラインドスポットモニターも装備し、車外事故低減に向けた安全性にも貢献している。
バスとしては初めて、同社独自のコネクテッド技術を活用した遠隔で車両コンディションをモニターできる「プレイズム」を採用。先進のコネクテッドサービスであるプレイズムを通して、路線バス事業者は自社のオフィスのPCでバッテリー残量や航続可能距離、充電状態などのBEV運用に欠かせない情報に加えて、万一の故障も把握できる。データに基づく予防整備や故障検知により高度純正整備が可能となる。
BEV路線バスの運行においては、急速充電器での基礎充電が前提となるため、施設のデマンドピーク上昇に伴う電気コストの負担増という新たな運用課題が発生する。同社の運行管理サービスの一部機能を利用することで、運行計画と連動した充電計画や遠隔充電管理の機能が拡充され、事業者施設側のエネルギーマネジメントシステムと連携することも可能。施設側の電力予測や使用状況を踏まえた充電計画の立案と充電実施により、事業者の電気コストにかかる課題解決に寄与する。
価格は、6,578万1,980円(東京地区)。販売台数は年販150台を見込んでいる。
※1:航続距離は、外気温・冷暖房の使用・乗車人数などの影響により変動
※2:急速充電(CHAdeMO)・外気温20℃・充電出力50kWの場合
「エルガEV」ショートホイールベース・都市型モデル 主要諸元
型式:ZAC-LV828L1
全長×全幅×全高:10,545mm × 2,485mm × 3,330mm(設計値)
ホイールベース:4,990mm
モーター種類:交流誘導電動機
最大出力 / 最大トルク:250kW(125×2) / 960N・m(480×2)
バッテリー種類:リチウムイオンバッテリー
バッテリー容量:245.3kWh(社内参考値)
充電方式:急速充電(CHAdeMO)
一充電走行距離:360km(30km/h一定速、国土交通省届出値)
最小回転半径:7.8m
乗車定員:70人