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バッテリーもサブスクへ。中国を中心に拡大するBaaS。規制の壁で導入に至らない日本を余所目に歩みを進める諸外国の動向

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バッテリーもサブスクへ。中国を中心に拡大するBaaS。規制の壁で導入に至らない日本を余所目に歩みを進める諸外国の動向

EVの利用・普及を目指す上で「バッテリー」に関するトピックは避けては通れない。

バッテリー自体の劣化や交換コストの問題、そのほかにも中古車価格がバッテリーの劣化具合によって大きく変わる点や、リサイクルフローが確立されていない点など多くの課題が残る。

こうした問題を解決するために、注目を集めているのがバッテリービジネスである「Battery as a Service(BaaS)」だ。

これは、EVユーザーがバッテリーを直接所有するのではなく、交換サービスを利用して充電済みのバッテリーと入れ替えることで、バッテリーの共有と再利用を実現するものだ。

この市場には自動車メーカーやバッテリーメーカー、ハイテク大手、新興企業など様々な企業が参入し覇権を争っている。

バッテリー市場は世界的に拡大しており、特に中国を中心にアジア圏内の市場が盛んだ。EVの導入が急増している背景も手伝い、BaaSの需要も同時に高まっている。

今後も世界的にEVの普及率が高まることで、BaaSのビジネスモデルはさらに普及していくことが予測される。

EV時代の新たなビジネスモデルとして、注目を集めるBaaSについて現在の流れを眺めていく。

中国を主戦場に拡大しつつあるBaaS領域の潮流

EVの普及拡大に伴い、BaaS領域も活発化している。様々な分野のメーカーが参入しており、覇権争いを繰り広げている最中だ。

BaaSモデルの市場規模は2022年時点で11億4,000万ドル(約1,786億円)と評価され、2030年までに53億ドル(約8,304億円)に成長すると見込んでいる。

その主戦場となっているのが中国。技術革新により、これまで課題だったEVバッテリーの充電時間が、電池交換であれば給油よりも短くなりつつある。

また中国のBaaSモデルの展開は、タクシーやライドシェア、カーシェア、バス、物流車両といった商用車領域で先行している点が大きな特徴だろう。

中でも電池交換式EVの導入が先行しているのがタクシーだ。牽引する北京市のタクシーは6万台強だが、2020年11月時点で約1万台の電池交換式EVタクシーが導入されている。そして北京市に続き、広東省と浙江省でもタクシーを中心に電池交換式EVの導入を推し進めている。

その背景には国や地方政府、国有企業レベルに至るまで、それぞれが電池交換EVの普及を全面的に支援し、明確な方向性と具体的な政策、アクションを取っていることが挙げられる。

中国における政策の一つに、販売価格30万元(約500万円)以上のEVの購入は補助しないという政策がある。これはEV価格の低減を図り、EV販売台数を増加させる狙いがある。しかし、この政策では電池交換式EVには価格上限を設けていない。つまりユーザーにとっては、低価格帯のEVもしくは電池交換式EVが補助金対象となるわけだ。

これにより電池交換式EVの普及を拡大し、交換ステーション増加も後押しすることができる。

地方レベルの政策を見ても積極的な支援の姿勢を見てとることができる。例えば北京市は、電池交換ステーションに関する営業許可、場所選定、標準化支援、保険と補助関連などの一連の政策づくりに取り組む。

さらに政策面での改善点や追加点を一般市民から意見を募っており、地域や産業の特徴に合わせ高い頻度で関連政策を発表・更新している。

加えて、国有企業は具体的なアクションを実施することが求められている。

例えば、中国全土で2万4,000カ所のガソリンスタンドを運営している中国石油化工集団公司(中国石化)は、NIOと戦略連携を行い、2025年までに中国全土で5,000カ所の電池交換ステーションを設立すると発表した。

BaaS領域を牽引する中国企業はどのようなサービスを展開しているのか

BaaS領域に、参入するケースが多く見られる。繰り返しとなるが、主な主戦場は中国だ。主にNIO、Aulton、Geelyなどが牽引しているが、他の企業も多く参入している。

NIOが発表したデータによると、2025~2032年にかけて累計約2,000万台のEVバッテリーが保証期間切れになるという。EVユーザーが高額なバッテリー交換コストなどの問題に直面するため、バッテリー寿命問題の解決は一刻の猶予もなく待ったなしの状況だ。

各社はどのような取り組みを実施し、どのような未来を描くのだろうか。

サブスクリプション方式のバッテリー交換サービス「NIO BaaS」を展開するNIO

中国の新興EVメーカーとして知られるNIO。当企業では、サブスクリプション方式のバッテリー交換サービス「NIO BaaS」を展開している。

バッテリーをフル充電のものと交換するのにかかる時間はわずか2〜3分程度。

すでに多くのバッテリー交換ステーションを保有しており、2025年までに世界で4,000を超えるステーションのオープンを予定している。そのうち、1,000のステーションは国外を想定しており、ヨーロッパなどでの展開を視野に入れているようだ。

また中国を拠点に置く、蓄電池大手メーカーCATLと、2024年3月にEV向け長寿命バッテリーの研究開発に関する枠組み協定を締結している。

両社は長寿命バッテリーの研究開発において共同研究を重ねることで技術的イノベーションを推進し、交換式車載バッテリーにおいて優先的に長寿命バッテリーの使用を加速させる目的だ。

世界最速のバッテリー交換を実現させたAulton

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