三菱電機、「磁束の有効利用でレアアース量を削減したモータの発明」が全国発明表彰「発明賞」受賞
三菱電機は6月4日、発明協会が主催する「令和6年度 全国発明表彰」において、「磁束の有効利用でレアアース量を削減したモータの発明」に関する技術が「発明賞」を受賞したと発表した。
全国発明表彰は、日本の科学技術向上と産業の発展に寄与することを目的に大正8年から続くもので、「多大な功績を挙げた発明、考案、又は意匠、あるいは、その優秀性から今後大きな功績を挙げることが期待される発明等」に授与される。
今回、同社の「磁束の有効利用でレアアース量を削減したモータの発明」が受賞。受賞者は、同社住環境研究開発センターの矢部浩二氏と桶谷直弘氏。
ヒートポンプ式空調機の圧縮機や電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)に使用される永久磁石埋込型モーターには、レアアースを含むネオジム磁石が使用されている。
レアアースは、耐熱性を高めるなど製品の性能を向上させることが可能な反面、産出量が少なく、抽出が難しい希少金属のため、使用量の削減できる技術開発が求められており、今回の発明がレアアースの使用量の削減、省資源化に貢献することから受賞につながった。
モーターは、固定子(ステーター)と回転子(ローター)で構成され、固定子と回転子の間に磁束を発生させることで回転子を回転させ、それが機械を動かす動力源となっている。永久磁石埋込型モーターの回転子は、電磁鋼板と複数のネオジム磁石で構成され、回転子が遠心力等の応力で破壊されないように、回転子外周と空隙との間が薄肉部でつながっている。
回転子を動かすために必要なネオジム磁石から発生した磁束は、固定子に流れ(有効磁束)、回転子を回転させるが、一部の磁束は薄肉部を通り、隣り合うネオジム磁石に入り込むため、磁束の漏れが発生し、回転に必要な有効磁束が小さくなる。一方で、有効磁束を大きくするため、薄肉部の幅を狭くして磁束の漏れを少なくすると、遠心力等による応力が増加し、薄肉部が破断してしまう懸念があり、遠心力による応力低減と有効磁束向上の両立が課題だった。
回転子の遠心力解析の結果から、遠心力による応力が薄肉部の一点に集中している点に着目し、応力が高い箇所の応力を低減しつつ薄肉部の幅を狭くできる新たな構造を発明。この新構造を用いることでネオジム磁石の磁束の利用率を向上し、ネオジム磁石の使用量を2.4%削減(※)することができ、希少なレアアースの使用量の削減、省資源化に貢献する。
※従来の構造と本発明の構造におけるネオジム磁石の有効磁束同等時の体積削減比率