クボタはカーボンニュートラルに向け産業用水素燃焼エンジンを開発【水素という選択肢 Vol. 2】
CO2排出量削減に向けて、BEV以外の選択肢にも注目が集まるようになってきた。ガソリンや軽油に代わる燃料を用いてICEをクリーンに使う試みも行われている。クボタが開発した水素エンジンについて、Motor Fan illustrated 201号(2023年7月)から抜粋して紹介する。<情報は当時のもの>
TEXT:石川 徹(Toru ISHIKAWA) PHOTO:MFi
産業用水素エンジンのプロトタイプをクボタが公開した。ベースになったのは、ガソリン、LPGおよび天然ガスを燃料とする火花点火式の「WG3800」3.8ℓ直4エンジン。中でも最も水素化に適していると判断されたLPGバージョンを基に開発された。2022年9月には、コンプレッサーや溶接機などを手掛けるデンヨーが、このエンジンを使って工事現場やイベント会場等で使用される可搬形発電機を開発することが発表されている。
エンジンブロックはベースモデルのものを使用し、シリンダーヘッドから上の部分を水素専用設計とした。着火性が高く燃えやすい水素を希薄燃焼させるため、2バルブから4バルブに変更するとともに、十分な吸入空気量を確保するため、ターボチャージャーを追加している。
バルブの中央にスパークプラグを配し、インジェクターから噴射する水素に着火する。トヨタのレース用水素エンジンが直噴(DI)であるのに対し、クボタはポート噴射(PFI)を採用。高出力が求められる乗用車とは違い、産業用途では低圧噴射が可能なPFIのメリットが多いと判断された。
現在は45kVAの発電機に求められる出力を確保する開発を行なっている段階で、エンジン特性など“性格”に関しては今後の検討課題とのことだ。まず発電機向けに着手したのは、水素タンクを車両に搭載してテストを行なうよりも法規制などの影響を受けず開発に集中できるからだという。定置式のアプリケーションで先行評価を行なうことで効率的な開発が進み、建設機器などに搭載されるタイミングも早まるだろう。