「RTK-GNSS」はどのように高精度測位を実現するのか|ヤンマーに訊く、農機のAD/ADAS技術②
RTK-GNSS(リアルタイム・キネマティック・グローバル・ナビゲーション・サテライト・システム)は、農業分野で高精度な自動運転を可能にする革新的な技術だ。一般的なGPSでは、位置情報の誤差が数mから数10mになることがあるが、RTK-GNSSはこれを2〜3cmの範囲まで抑えることができる。
この高精度をどのように実現しているのか。ヤンマーアグリ株式会社 開発統括部先行開発部部長 日髙 茂實氏と開発統括部先行開発部先行技術グループ 岩村 圭将氏に話を聞いた。
誤差2〜3cmレベルを実現する高精度GPS技術
現在、ヤンマーアグリの自動運転農機「SMARTPILOT®(スマートパイロット)」シリーズには、直進アシストトラクター/直進アシスト田植機、オートトラクター/オートコンバイン、ロボットトラクターの3つの仕様があり、仕様によって対応する走行モードが異なる。
直進・オート・ロボット・枕地直進と4つの走行モードの切替が可能で、作業条件や目的に応じた最適な設定を選択できる。
はじめに直進モードは、基準線を作るためのA点・B点を指定する。起点となる場所(A点)を登録し、直進。続いて、終点となる場所(B点)も登録する。すると、A点B点を基準とした基準線が作成され、その後は基準線に沿って、自動で作業が進められる。耕うん作業、肥料散布作業、播種作業などが自動かつ正確に行え、経験が浅い就農者でも無駄なくスピーディに作業ができる。とくに、広大な面積のほ場であればあるほどメリットが大きく、操縦者の疲労を大幅に軽減することが可能である。
次にオートモードは、ほ場の形状に基づき自動で作業経路を生成し、外周部を除いたほ場の9割の面積を人の操作なしで作業できる。オートモードでは人の搭乗が必要だが、ロボットモードでは、外周部を除くほ場の9割の面積を無人で作業が可能だ。
枕地直進モードは、オートもしくはロボットモードで作業しきれないほ場外周部の自動直進作業が行える。四隅の旋回は手動で行う必要があるものの、端部の作業効率と精度を向上させることができる。
現時点ではロボットトラクターのみ、ロボットモードが搭載されている。
また、「SMARTPILOT®(スマートパイロット)」シリーズでは、農作業の精度要求に合わせて2つの測位方式を採用している。D-GNSSとRTK-GNSSだ。