AGCと産総研グループ、高圧水電解基礎評価試験の共同研究を開始。グリーン水素製造の低コスト化目指す
AGCと産総研グループは2月29日、高圧環境におけるPEM(プロトン交換膜)型水電解技術の特性解明を目的とした共同研究を4月から開始すると発表した。
PEM型水電解は、太陽光発電などの発電量の変動が大きい再生可能エネルギーの活用に適した技術で、グリーン水素製造に必要な技術として注目されている。
グリーン水素とは、再生可能エネルギー由来の電力で水を電気分解して製造する水素のこと。グリーン水素の製造・供給は世界各国で計画されており、燃料電池車など社会インフラにおけるグリーン水素利用の拡大には、水素製造コストの低減が課題となる。その解決方法のひとつが高圧で水素を製造する水電解技術で、欧米では高圧環境下(3~5MPa)での水電解装置運転が主流となっている。
一方、日本では高圧ガス保安法による高い安全基準が定められていることなどから、結果として1MPa以上の高圧で水素製造装置の性能を評価できる公的な設備がないことが課題となっている。
同共同研究は、産総研福島再生可能エネルギー研究所(FREA)に実験評価設備を新設し、2024年4月から実験を実施する予定。高圧環境下で水素を製造するための知見を蓄えることを目的に、両者協力のもと研究を進める。
AGCは、今回実験に用いる水素製造用フッ素系イオン交換膜FORBLUE Sシリーズをはじめとした電解膜に関する事業に1975年から取り組んでおり、これまで蓄積した知見を活用し、高圧環境下での基礎的な膜材料特性の把握と、高圧水電解用膜設計技術の確立を目指す。
産総研はこれまでにFREAで開発してきた水電解に関連する基礎技術や評価技術を基に、高圧水電解における膜材料評価技術の確立を目指す。
高圧環境下で製造した水素は含有水分量が少なくなり、乾燥設備の小型化や昇圧設備の削減など投資コストの低下につながる。両者は、同研究はカーボンニュートラル実現に向けた水素普及への貢献につながると期待している。