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前編:ニッサン PLASMA RB20E ストレート6:クラシックな技術の集大成版【兼坂弘の毒舌評論 復刻版 #3-1】

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前編:ニッサン PLASMA RB20E ストレート6:クラシックな技術の集大成版【兼坂弘の毒舌評論 復刻版 #3-1】

1983年からモーターファン誌で始まった「兼坂弘の毒舌評論」。いすゞ自動車の技術者を経てエンジンコンサルタントとして活躍した兼坂氏が、当時のエンジンを「愛情を込めてめった斬り」したことで人気を博した。30年以上前に、現在のエンジン技術を予言していたかのような内容も少なくない。また、今となっては逆に新鮮な、当時のカルチャーを文章から感じることもできる。

テクノロジーの紹介だけでなく読み物としても面白いこの連載を、TOPPERでは抜粋してシリーズでお届けする。今回は、モーターファン1985年4月号から日産の直列6気筒エンジン「RB20E」に関する記事を前編・後編の2回に分けて転載する。

当時の時代背景や筆者、編集者の意図を尊重し、文章はすべてオリジナルのまま掲載。写真および小見出しの一部はTOPPER編集部が追加した。写真提供:日産自動車

<TOPPER編集部追記:RB20Eエンジンの歴史>
直列6気筒であったL型エンジンの後継として開発され、1984年に登場したC32型ローレル(5代目)に搭載されてデビューした。RB20EはSOHC 12バルブ自然吸気だが、DOHC 24バルブのRB20DE、SOHCターボ仕様のRB20ET、DOHCインタークーラーターボのRB20DET、ディーゼルのRD28/RD28Eなどのバリエーションがある。また、排気量アップを前提に開発されたといわれており、ガソリンエンジンでは2.4リッターから3リッターまでバラエティに富んだ仕様が登場した。

1989年には2.6リッター (2,568 cc) DOHC 24バルブツインターボ「RB26DETT」が登場。「スカイラインGT-R」(R32型) の復活を支えた。その後もRB26はR33、R34 GT-Rの心臓部として2002年まで生産された。

RBシリーズとしては、セドリック/グロリア(Y34型)の生産終了に伴い、2024年を最後に次世代の6気筒エンジン「VQシリーズ」に完全に後を譲った。RB25DETがY34型の4WD仕様に搭載されていたのが最後のRBとなった。

RB20Eエンジンと共にデビューした5代目「ローレル」。写真は上級グレードの「メダリスト」。押し出しのあるフロントエンドとスクエアなボディ造形、コントラストの効いたツートンカラーが当時の流行を思い出させる。

高級風のクルマ、ローレルとマークIIを比較すると、マークIIのほうが高級そうに見える。というのはマークIIのテールにはTWINCAM 24VALVEと浮き出ているからで、L6とV6との差ではない。マークIIをミジメなワルマにするには、QOHC(4本カム)V6とローレルに大きく書込みさえすればよかったと思うのに、いま、L6。しかも12バルブなのだ。ニッサンに勝算ありや?

今、なぜL6か?

「毒舌評論その2」でニッサンV6エンジンを読まれた読者の中で、日産がV6のほかに新たにL6の2Lエンジンを出してくると想像した人は非常識である。エンジンの究極の姿はV6であるといわれると、昨今のF1エンジンは図1のようなV6、1.5Lターボ付で、750馬力“強“(1m“弱“のサカナを釣り落したゾ!と同じで信ずる人はオヒトヨシ)を発揮しているのだから、ヘソ曲がりのオレまでもV6こそ究極のエンジンと信じてしまうし、たぶんトヨタでも今ごろは発売直前の残業に追われていると思って当たり前である。

加速を良くしながら燃費を良くすることは、エンジン技術だけでも可能ではあるが、車両重量を軽くするのが一番の近道である。

写真2の1920年代の名車ブガッティでは、車の主人はエンジンで、人はその後ろに乗せてもらっているように見えるが、85年型キャデラックでは、写真3のようにV8、4.1Lのエンジンは日本の1.5L車の如くに横置きされ、今や美人はロングノーズではなくブタハナである。これこそが進歩であり、歴史の流れなのだ。

長いエンジンを縦に置くと、図4のようにロングノーズとなり、ショートノーズに比して沢山の鉄板を使って大きなエンジンルームを作らねばならず、重いエンジンルームは重いフロント・サスペンションを、ブレーキを、タイヤを要求して、雪だるま式にクルマが重くなってしまうのだ。

敗北主義の日本とちがってアメリ力は戦争をしたら必らず勝つつもりで、そのとき必要な石油をいま汲み出さないでなるべく地下にそのままにしておきたい。そこで車に燃費規制をするわけだが、図5はそれに対応するGMの燃費のためのダウンサイズ計画だ。人間は小さくなり得ないので、専らにエンジンルームとバゲージ・スペースを小さくしてゆく経過が良くわかる。

日産のエンジニアを直撃「なぜダ?」

秘密主義の日本では将来計画を語る会社はないが、日産でも当然に図5のような計画を金庫の中にしまってあると考えて当然で、スポーツ・バージョンとしてはV6 DOHC 24バルブとF1と相似形のエンジンが今ごろ発表され、オレ逹をシビレさせるとダレしも期待していたのだ。

それなのに、なぜダ?

なぜ、今L6が必要なのか、を日産のエンジニアから聞いた。

その速記録を再録するとーー。メンバー:
日産自動車 第一機関設計部 佐々木健一部長
第一機関設計課 久富尚志課長

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