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後編:ニッサンPLASMA RB20DE/RB20DET:現代の最高の技術の集大成版だが…【兼坂弘の毒舌評論 復刻版 #4-2】

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後編:ニッサンPLASMA RB20DE/RB20DET:現代の最高の技術の集大成版だが…【兼坂弘の毒舌評論 復刻版 #4-2】
<参考写真>「RB20DET-R」エンジンを搭載した1987型の「スカイライン 2ドア スポーツクーペ GTS-R」

1983年からモーターファン誌で始まった「兼坂弘の毒舌評論」。いすゞ自動車の技術者を経てエンジンコンサルタントとして活躍した兼坂氏が、当時のエンジンを「愛情を込めてめった斬り」したことで人気を博した。今回は、日産のRB型・直列6気筒エンジンのDOHC 24バルブ仕様である「RB20DE」および「RB20DET」について、モーターファン1985年12月号に掲載された記事の後半部分を転載して紹介する。

当時の時代背景や筆者、編集者の意図を尊重し、文章はすべてオリジナルのまま掲載。写真および小見出しの一部はTOPPER編集部が追加した。写真提供:日産自動車

連続可変吸気のアイデア

Induction Systemをコンピューターでコントロールしたければ、CVIS (Continuously Variable
Induction System:連続可変吸気系統)を発明しなければ、とここまでいうと誰でもの頭に浮かぶのは、トロンボーン式にブランチの長さを速度に応じて無段階に変えるアイデアである。これはF1エンジンで試みようとしたことがあるらしく、アイデアだけは何かの雑誌でみたような気がするが、これはダメである。

図9を見ればよくわかるように、低速ではブランチ内の流速は落ちてしまい、全く慣性過給効果は期待できないのである。長さとともに内径まで連続的に変るトロンボーン式ブランチができない限り、図9の一番上の線はムリと考えて当たり前ではある。が、ムリと直ぐに悟りたがるのが若モーロクした日本のエンジニアである。

天才バカボンこと毒舌はこう考えるのだ。吸気弁は1コでも2コでも構わない。だからブランチはメンドクセエから1本にする。で、バルブ・タイミングはF1用で図10に示すように、オーバーラップを大きく、吸気弁閉時期は遅らせる。それからブランチを高速側に、例えば5000rpmチューニングすると、図9の点のピークトルクが得られる。

このエンジンの2500rpmのときはピストンの速度は1/2に、吸気弁が開いている時間は2倍に、ブランチを流れる空気の流述は1/2になってしまう。これを5000rpmのときの条件に戻してやればよいワケで、図10の1点鎖線で示すように吸気弁弁開期間を5000rpmのときの半分にしてやれば、吸気弁が開いている時間は5000rpmのときと同じになるリクツだ。だから2500rpmのときでも圧力波効果は5000 rpmと同じになるし、1回転毎の吸入する空気量が同じで、空気が流れる時間が同じなら、ブランチ内流速は同じになり、慣性効果も5000rpmと同じになり、図9の3点鎖線、一番上のトルクが確保できるリクッだ。

シカケは簡単、図11で、ブランチの途中に開弁時期を変えることができるロータリーバルブを取りつけるだけだ。

5000rpmのときはロータリーバルブと吸気弁は同期して開閉するので、ロータリーバルブはないとして吸気系を考えればよいのであって、中速、例えば2500rpmのときは、ピストンの下向きの行程と共に吸気弁は開き、吸気をしようとするが、ロータリーバルブが閉じているので、シリンダー内の圧力は下がるだけだ。ビストンが行程の中程まで下がったとき、初めてロータリーバルブは開くのだ。

ブランチ内の空気は高速で、5000rpmのときと同じ速度でシリンダーに流人する。この空気の流れに逆らって、マイナスの圧力波は集合管に向って進み、集合管に到着するとプラスの波に変換する。この波は高速で流れる空気に乗ってシリンダー内に入る。ピストンが下死点にきていったんは停止するが、高速の空気は止まることができず、流入し続け、シリンダー内圧力を高め続けているときプラスの圧力波も飛びこみ、さらに圧力が高まったところで吸気弁を閉じて逃がさない。これで5000rpmのときと同じ条件で慣性過給ができたことになる。高速で流入した空気は高速の渦を作り、ノッキングなしのよい燃焼が約束されている。

発明の日的である1000rpmのトルクをガバッと高めることはできるか?

1000rpmのときは図10に示すように、下死点近くになってホンのチョットだけ、すなわち5000rpmのとき1/5の期間だけロータリーバルブによって吸気通路を開くことになるのだ。こうすることによって、吸気行程中にブランチ内を空気が流れ続ける時間は5000rpmのときと同じになったのである。

吸気弁でも排気弁でも弁を通って流れるガスの流れ抵抗は、“時間×面積”によって決まってしまうのだ。

シリンダー内に流入する“時間”は5000rpmのときと同じにできたとしても、下死点近くでは吸気弁のリフトは小さく“面積”の確保はムリで、低速での慣性過給はムリかも。だがこのアイデアはターボ過給のときには有効なのだ。

閑話休題。無過給エンジンに慣性過給すればパワーアップすることはわかったが、過給エンジンの場合は?OKである。ブーストを高めて空気の密度を2倍にしたとすれば、慣性過給の効果は2倍に高まるリクツである。水力発電所で水の流れを急に止めると、水の慣性効果で鉄管は破裂してしまうのだ。そのわけは、水の密度は大気の1000倍もあるからである。だからブーストを高めれば高めるほど過性効果は高くなり、ターボ・エンジンにタコ足マニホールドを使わないデザイナーはバカである。

ニッサンのエンジニアは頭が良く、図7のようにチャーンと2種類の長さのタコ足にしたのはリッパだ。3800rpmまでは、トップで140km/hまでは長ブランチだけを使って吸気するので図12のようにシリンダー内に渦ができて、燃焼を促進し、短時間に燃焼を終らせることができたのだそうだ。ベリグッド!

オレのアイデアを応用したらターボラグは解決する

ギャレット製のターボチャージャーを採用し、(V6ジェットターボは日産製)チャージクーラーをラジエターの右に取りつけてみたところで、しょせんはナミのガソリン・エンジン。ノッキングには抗し難く、せっかく10.2までに高めた圧縮比を8.5まで下げざるを得なかった。

過給エンジンの圧縮比を下げることの空しさは宇都宮からの帰りにシミジミと感じさせられた。行きにスカイラインということだけでオマワリサンとニコヤカにお話するチャンスがあったので、帰りはオトナシク140km/hどまりであった。家に帰るまでの間ブースト計に注目すると、少しぐらいの登り坂があっても+ブーストには一度もならなかったのだ。交通安全週間以外のときキモチ良く飛ばしてみたところで、ブースト計が+を指し続ける時間は瞬時なのだ。瞬時のために圧縮比を下げ、その結果、燃費を悪くし、だからといって走行燃費を良くみせるために終滅速比を下げたのでは、加速がボヤけてしまい何のためのターボか、になってしまうのだ。これではベンツもイチヤーメタといいたくなる。だが、これではドイツもこいつもシュタインコップフ(石頭)なのだ。

シュタインコップフなヤツは過給ガソリン・エンジンは圧縮比を下げなければ不可能であるとか、その出力限界とか、熱効率の限界などをすぐにコンピューターを持ちだして計算したがるが、機械学会誌9月号を読むと山沢さんという人が「科学技術者と思考の柔軟性」の表題の下に、昔のヒコーキ屋はどうしてもヒコーキは音速を超えることはできない、という論文ばかり書いていたんだそうだ。オレはこういうとき、バーロー、デキナイ話スンジャネェ、とドナッタが、さすがに山沢さんはインテリ、“思考の閉回路”に陥ってはいけない、とおっしゃるのだ。そこで思考の回路を開いて、過給ガソリン・エンジンを考えてみよう。

ニッサンRBエンジンをターボ過給してブーストを水銀柱500mmまで高めるということは、大気圧の1.65倍に高めたことになる。温度が大気と同じく25℃であるならば、出力は65%アップが期待できるところだが、70%の効率のコンプレッサーで圧縮しても120℃と高温になり、空気密度は33%しかアップしないので、パワーアップも33%どまりになるリクツだ。もっとパワーを出したいのでチャージクーラーで120℃のチャージを80℃にまで冷やしてやると、空気密度は大気の1.4倍となり、パワーも40%アップを期待していいのだ。が、それでも圧縮比10のままではノッキングする。止むを得ず図13のように燃焼室容積をBからB’に大きくして圧縮比を8.5にまで下げると、点線のように圧力と温度が下がってノッキングから逃れられるが、熱効率は下がる。しかし他にテがないからシカタないのだ。必要悪だ。と、こう考えるのが思考の閉回路である。

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