学生フォーミュラ上位6大学中2校が「ヤマハ製ユニット」。強さの秘訣は、学生の成長を促すサポート体制にあった|学生フォーミュラ 2024
ヤマハ発動機は、学生フォーミュラのサプライヤーとして、第1回大会からサポートを継続している。2024年大会では、3連覇を達成した京都工芸繊維大学をはじめ、総合成績6位の日本自動車大学校がヤマハ製ユニットを搭載。サポートするチームは14校におよぶ。ヤマハが提供する技術サポートや、学生たちの成長を促すアドバイスの内容について、担当者たちに話を伺った。
TEXT&PHOTO:石原 健児(Kenji Ishihara)
主催:公益社団法人自動車技術会
目次
学生フォーミュラ出身者46名が支援を担当。目的は"学生がチャレンジできる環境"を提供すること
ヤマハ発動機(以下:ヤマハ)には学生フォーミュラ経験者が多数在籍し、総勢70名を超える。学生フォーミュラ専用のサポート部署も設置され、46名の経験者がこのサポートに携わっている。インタビューに答えてくれたのは、PF車両開発統括部 PF戦略部価値創造グループ運営・管理リーダーの斎藤 悠介氏とLM戦略統括部統合戦略部つながる推進グループ自技会窓口担当の山田 宗幸氏。 どちらも第1回大会経験者である。
「大会サポートを始めたきっかけは、大会運営サイドと市議会からの依頼でした。2輪車のエンジンを使うということで、当社にエンジンサプライヤーとしての相談をいただいたんです」(山田氏)
ヤマハのサポートの主な目的は「学生がチャレンジできる環境を提供すること」。大学卒業後3年以内の大会経験者が支援を担当し、学生が相談しやすい環境を整えている。
エンジンや部品の提供、各種講習会も開催
ヤマハは、2気筒、3気筒、4気筒などのエンジンや周辺部品を無償提供し、学生たちのニーズに合わせたサポートを行っている。「支援する際には、各大学から作りたいマシンと必要なエンジンについての企画書を提出してもらいます」と斎藤氏は説明する。その後、納得できる企画であれば支援が決定する。
「例えば、重量が軽いので、単気筒エンジンを支援してほしい、という要望に対しては、自分たちがこういう車両を作りたいと考えていて、そのために軽量の単気筒エンジンが必要だといったストーリーやロジックがあるかを確認します」(斎藤氏)
目標に対し、理にかなった考えを持っているかを重視しているという。
「経験が豊富なチームにはエンジン単体だけを渡しますが、新規に参加する支援校に対しては、車両の完成品を渡し、分解しながら車の構造を知ってもらうところから始めます」(斎藤氏)
分解を通じて、学生たちが自ら構造を学べる機会を提供している。
学生フォーミュラは例年8月末から9月上旬に開催される。参加校は1月の期末試験後までに基本設計を行い、春休みに車体を製作、春休みの終わりにシェイクダウンからテスト走行を行うのがベストなスケジュールだ。
「基本設計時に必要なのは技術の基礎です。そこで当社では強度講習会や車体講習会を実施するほか、2024年にはエンジン整備講習会も行い、基礎を理解した上で設計をしてもらうようサポートしました」(斎藤氏)
車体製作段階では、エンジンを本社に持ち込み、実験担当が分解・組み立てをサポート。テスト走行に向けてエンジンをリフレッシュを行うという。
「エンジン構造を隅々まで学んでもらい、状態の良いエンジンでテスト走行に臨んでほしいですね」(斎藤氏)
最も基本的な強度講習は支援校に限らず、学生フォーミュラに参加するすべての学生が参加可能だ。