車椅子ユーザーの自由を広げる。特定小型原付規格の電動アタッチメントで、公道走行と多様な利用シーンに対応した設計に注目集まる nicomo|JAPAN MOBILITY SHOW 2024
車椅子ユーザーの行動範囲を広げる新しい製品が注目を集めている。合同会社nicomoによって開発された電動アタッチメントだ。この製品は、既存の車椅子に取り付けることで、電動化を実現し、時速20kmでの走行が可能だ。特定小型原付規格に対応しており、公道での使用もできるため、車椅子ユーザーの移動における自由度が大幅に向上する。この電動アタッチメントの開発者であり、合同会社nicomoの代表である田村達彦氏に、製品開発の背景や今後の展望について話を伺った。
TEXT&PHOTO:中辻 タカオ(Takao Nakatsuji)
主催:一般社団法人日本自動車工業会(JAMA)
合同会社nicomoホームページ:https://www.nico-mobility.com/
目次
公道走行を可能にした特定小型原付規格対応の電動アタッチメント
nicomoの電動アタッチメントは、既存の車椅子に取り付けて電動化する装置である。特定小型原付規格に準拠して設計されており、公道での使用が可能だ。田村氏は、開発のきっかけについて次のように語る。
「海外では車椅子用の電動装置が普及しており、ベンチャー企業が数多く参入しています。しかし、日本ではそういった動きが遅れていると感じ、法規制や使用環境に適した製品を開発する必要があると考えました」
この電動アタッチメントは、時速20kmで車道部分の自転車レーンや自転車道を走行でき、時速6km以下であれば歩道を走ることも可能だ。また、ライトやウィンカー、速度表示灯、ホーン、ナンバーホルダーが標準で備わっており、安全面でも十分配慮されている。
「条件によりますが、20km以上は確実に走れます」と田村氏は説明する。
実用性と利便性を両立した取り付け取り外しが簡単な設計
この製品の大きな特徴は、簡単に取り付け・取り外しができる点だ。既存の車椅子にフレームを取り付け、そのフレームに電動アタッチメントを装着する仕組みとなっている。操作はレバーで行うため、取り外しも簡単に設計できるよう設計されている。
「お店が狭いときに外しておけるよう、簡単に脱着できる仕組みを考えています」と田村氏は説明する。狭い場所での使用や、公共交通機関の利用時にアタッチメントを取り外せるため、様々なシーンで柔軟に対応できるという。
さらに、「電車の車椅子スペースに入れられるのは長さ・高さが120cmまでなんです。そのため、車椅子と合わせて120cmに収まるよう設計しています」と田村氏は説明する。この配慮により、ユーザーは電車を利用する際もスペースの制限による不便を感じることなく移動できる。
ただし、簡単に着脱できる設計にすることで、強度の問題が浮上した。結合箇所に強度を持たせると重量が増加してしまうため、強度と軽量化のバランスを保つことが大きな課題だったという。また、前輪駆動のため、上り坂で重心が後ろに寄る際にも十分なトラクションが得られるよう設計するのが困難だったとも語っている。