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大同特殊鋼のリアクトル用金属磁性粉末が新型プリウスに採用

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大同特殊鋼のリアクトル用金属磁性粉末が新型プリウスに採用

大同特殊鋼(本社:愛知県名古屋市)は、トヨタ、豊田中央研究所、デンソー、ファインシンターと共同でハイブリッド自動車のバッテリー電圧を上げる部品(リアクトル)に使用される金属磁性粉末を開発。最新のハイブリッドシステムに採用された。

今回採用された金属磁性粉末はトヨタと豊田中央研究所が材料設計し、大同特殊鋼が持つアトマイズ技術(※1)と粉末加工技術を応用し独自技術を採り入れることで実用化に至った。目標とする材料特性と部品性能を達成したことで、リアクトル部品の小型化が可能となり、部品コスト削減に貢献している。

1.背景

大同特殊鋼の金属磁性粉末は、2009年にトヨタが発売したプリウスのリアクトル部品用原料として採用されて以来、約13年間にわたり材料の安定供給に努めている。

2.リアクトルとそのニーズ

ハイブリッド車の動力機構とリアクトル部品
ハイブリッド車の動力機構とリアクトル部品

ハイブリッドシステムでは、バッテリー電圧を高める昇圧回路が車両を駆動するモーターのトルクを高めている。リアクトルはその昇圧回路の基幹部品のひとつだ。

リアクトルはバッテリーの直流電圧を高めるために使用される電気部品で、鉄心にコイルを巻き、電流を流すことにより鉄心を磁化させて使用。コイルに電流を流した際に蓄えられる磁気的エネルギーが高いことが望ましく、エネルギー損失が低いことが求められる。

鉄心は金属磁性粉末を金型に充填し、プレス成形によって製造。ハイブリッド車に搭載されるパワーコントロールユニットの小型化は、小型車種への採用、車両デザインの多様性、さらに走行性能向上に貢献する。

リアクトルの小型化には、スイッチング周波数(※2)を高周波化することに加えて、大電流下において、鉄心が磁気的に飽和しないような材料選定および部品構成が必要だ。

3.新たに開発した金属磁性粉末の特長

開発した金属磁性粉末の磁化曲線の直線性
開発した金属磁性粉末の磁化曲線の直線性

大同特殊鋼のガスアトマイズ技術を適用することで、良質な金属磁性粉末の製造が可能となった。これまで使用してきた金属磁性粉末と比べ、磁気的損失を低く抑えることができた。

さらに、粉末状態で酸化熱処理を施し、粉末表面に適切な厚みの硬質な酸化皮膜を生成。大電流下での使用においても鉄心の磁気的な飽和が起こりにくくするトヨタと豊田中央研究所の材料設計に対し、安定した酸化皮膜を形成する量産熱処理技術を大同特殊鋼が確立した。

従来型ハイブリッドシステムのリアクトルと比較して、部品体積を30%低減。さらに、巻線面積の減少により部品コストの削減にもつながっている。

ハイブリッド用リアクトル部品
ハイブリッド用リアクトル部品

大同特殊鋼は将来の需要拡大を見据えて、2019年に量産規模での生産が可能なガスアトマイズ工場を新設。また、粉末表面への均一な酸化皮膜を生成するための熱処理も量産規模での実用化に至った。この金属磁性粉末は最新のハイブリッドシステム用リアクトル原料として、2021年度から量産が開始され、適用車種の拡大に伴う増産対応を推進している。

新設ガスアトマイズ工場
新設ガスアトマイズ工場

※1 アトマイズ技術
アトマイズ法とは金属粉末製造法のひとつ。原料を溶解炉で溶かし、タンディシュと呼ばれる容器に流し込む。底面の穴から流れ出た溶湯流に、高圧のガスや水を吹き付けて溶湯を飛散・凝固させて粉末にする製造方法。必要とされる技術として、原料の溶解技術、溶湯流を安定させる技術、ガスや水を吹き付けるノズル設計技術などがあげられる。

※2 スイッチング周波数
パワートランジスタなどのスイッチング素子のオン・オフ時間を調整することで、出力電圧をコントロールする。このオン・オフ切替を制御する信号周波数のことを指す。

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