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サンコール、EV用「磁気式電流センサー」をリリース

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サンコール、EV用「磁気式電流センサー」をリリース

サンコール(本社:京都府京都市)は2023年2月、EV向け製品の新しいライナップとして「磁気式電流センサー」の販売を開始した。同製品はCROCUS社のICを搭載しており、全温度範囲で1.0%以下の高い精度、6mA以下(当社従来製品比 約1/5)の低消費電力を実現。全く新しいコンセプトの電流センサーで、EVの高精度なセンシングを担う。

EVチャージングステーション
EVチャージングステーション

近年、EV化はグローバルで加速し続けており、2025年には新車販売の50%以上が電動車となるとも予測され(※1)ている。そんな中、バッテリーの長寿命化と充放電の精密なコントロールが求められている。
 
サンコールの電流センサーは、EVのBMS(バッテリーマネジメントシステム)などに搭載され、電流値を検出する部品だ。北米・欧州のEV、自動搬送機、EVチャージングステーションやソーラー発電など様々なシーンで活用されている。

同社が2023年2月に発売したのは、磁気センサーICにより配電部品(バスバー)に発生する磁界を読み取ることで電流検知をおこなう磁気式電流センサー。米国のICチップメーカーとコラボレーションし、従来とは異なる方式により高精度で汎用性の高いセンシング・ソリューションを提案する。

サンコールのEV用電流センサー
サンコールのEV用電流センサー

未来の安定供給をかなえるために

大電流用センサーは発電所にも使われる
大電流用センサーは発電所にも使われる

磁気式電流センサー販売開始の背景にあるのは、2021年からの電子部品の世界的な供給不足。このことは、新車販売の鈍化を招くなど、自動車業界にも大きな影響を与えている。

サンコールの従来品に「シャント式電流センサー」があるが、このシャント式では、抵抗体上部の電子基板で信号変換・演算・出力を行うため、ひとつ当たり数十点の電子部品が必要となる。将来的な需要に対応できなくなるリスクを絶つため、部品点数が数点のシンプルな構成で稼働できる磁気式センサーを開発した。

優れたICで新境地を

開発にあたって譲れないのは精度の確保。EVの走行では、その動力源であるリチウムイオンバッテリーの充放電管理をおこなっており、常時流れる電流値の計測が欠かせない。そのため、無駄のない高精度なセンシング技術が、走行距離の延伸やバッテリー延命にも大きく関わる。

そこでサンコールが注目したのが、CROCUS Technology社(以下、CROCUS社)の磁気センサーIC。同社は、米カリフォルニアに本社を置き、様々な産業向けのICチップを供給している。日本でも大手メーカーと販売契約を結んでおり、同社の謳う、12週(※2)という短い納期は業界でも注目されている。

「TMR= Tunnel Magneto Resistance」は、磁気センサーの中でも最高レベルの精度をもつICチップで、世界でも数社しか供給できない希少な技術。直線性(※3)や応答性(※4)にすぐれ、米国のカーメーカーなどに採用されてきた。

今回の開発にあたっては、CROCUS社の協力も得てTMRを車載用大出力モーターの制御用インバーター等、高電流が印加されるデバイスの電流検出用途向けに実装する手法を考案。TMRセンサー ICの大電流用途でのバスバー実装は、業界初の試みである。

磁気式センシング特有の課題は、外部磁界のキャンセリング。

車体の内部、とくに充放電バッテリーやモーター、インバーター周辺に増えるコンダクターや金属板からは、無数の近接磁界が発生する。サンコールは、磁場解析とシールド性能をシュミレーションし、最も適したシールド構造を考案。誤差1.0%以下の高い再現性を実現した。

新しい磁気式センサー

日本で広く浸透している磁気式センサーに「ホールIC方式」と呼ばれるものがある。ホール効果と呼ばれる電流磁気効果を応用したホール素子から構成される。ホールセンサーは、電流センシングの際に導体としてバスバーが必要であることから、高精度な電流検出にはホールICとバスバーとの位置調整が求められる。 

サンコールが開発した磁気式電流センサーは、バスバーと一体となった「バスバー実装型」で提供されるため、こうした位置調整が不要。また、TMRセンサー ICスペック範囲内において必要な電流レンジでキャリブレーションすることが可能であり、フルレンジ測定時の分解能をより高めることができるという。

さらに、チップの性能により、稼働にかかる消費電力は6mAにまで抑えることに成功。シャント式より約1/5のエネルギーで稼働でき、環境への負荷軽減に貢献できるセンサーが生まれた。

このコラボレーションは、CROCUS社のビジネスとしても新しいものとなった。従来、CROCUS社のチップは、100A以下の微小~低電流レンジを高精度に検知する基盤実装用途やスイッチ、リニアセンサー用途が多く、大電流用バスバーへの応用は新しい事業領域だ。

今後は両社のネットワークを生かし、これまでアプローチしえなかった顧客層へも協力して拡販を図る方針だという。

さらに冗長性を高めた製品開発を

現在、さらなる高付加価値センサーも開発中だ。ISO26262の機能安全要求で重視されるのは、「冗長性」の担保。つまり、システムの一部に何らかの障害が発生した場合に備えて、障害発生後でもシステム全体の機能を保てるように、予備装置を平常時からバックアップとして運用しておく必要があるのだ。この要求にこたえるため、低電流と大電流、ふたつの異なる測定レンジをもつセンサーや、シャント式と磁気式を組み合わせたデュアル方式などを開発しているという。

※1:Boston Consulting Group 2022年
※2:注文~納品まで12週。
※3:直線性Linearity理論値との誤差を示す正確さの度合い。
※4:応答性:半導体の入力時の応答速度。3μsec
※5:1/25-27東京ビッグサイトにて開催

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