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マレーシアでのバイオマスを活用したe-メタン製造事業の詳細検討を開始…IHIと大阪ガス

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IHIは2023年4月19日、大阪ガスおよびマレーシアの大手国営ガス・石油供給事業者のPetroliam Nasional Berhad(以下「ペトロナス」)の技術ソリューション部門であるPETRONAS Global Technical Solutions Sdn. Bhd.と、マレーシアにおけるバイオマスを活用したe-メタン製造事業の詳細検討を開始するための覚書を締結したと発表した。

本事業の概要図
本事業の概要図

・マレーシアで、バイオマスである未利用森林資源や農業残渣を高温でガス化することで、水素(H2)、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO2)を主体とする合成ガスを製造
・得られた合成ガス中の水素と一酸化炭素をメタネーションすることで、e-メタンを製造
・ペトロナスがマレーシアに保有するLNG基地でe-メタンを液化し、日本などに輸出

マレーシアにおいて、バイオマスである未利用森林資源や農業残渣を活用したe-メタン(※1)製造事業の基本設計(FEED)(※2)実施判断に向けた詳細検討を開始するための覚書を3者が締結した。本事業では、バイオマスガス化技術(※3)とメタネーション技術を組み合わせた新たな方式により、再生可能エネルギー(以下「再エネ」)電力の価格に影響されないe-メタンの製造を目指す。

2050年の脱炭素社会実現に向け、産業・家庭部門の熱需要に対応するガス体エネルギーの脱炭素化は重要な課題となっている。e-メタンは、既存の都市ガスインフラや消費機器が活用できるため、スムーズなカーボンニュートラル社会への移行と社会コストの抑制が可能だ。発電分野、輸送分野での利用も期待されているという。

従来、e-メタンの製造方法としては、再エネ電力をエネルギー源にして製造された水素を原料に用いてメタネーションする方式が知られている。この方式は、再エネ電力の価格が製造コストの大きな割合を占めるため、安価な再エネ電力の調達が重要とされている。そこで本検討においては、再エネ電力の価格に影響されない、バイオマスをエネルギー源としたe-メタン製造を目指し、新たな方式の実現に向けた検討を行うとしている。

本事業は、安価で豊富な未利用バイオマスとペトロナスのLNG基地が存在するマレーシアにおいて、未利用森林資源や農業残渣等を高温でガス化することで水素、一酸化炭素、二酸化炭素を主体とする合成ガスを製造する。得られた合成ガスを用いてメタネーションを行うことで、再エネ電力の価格に影響されないe-メタンの製造が実現する。

2030年に、製造したe-メタンをペトロナスがマレーシアに保有するLNG基地で液化し、日本などに輸出することを目指す。

本方式では、副産物として得られるバイオマス由来のCO2を地中に貯留(CCS)(※4)する場合、ネガティブエミッション(※5)も可能となるため、今後その可能性についても検討するという。

IHIはこれまでに、高性能で長寿命な独自のメタネーション触媒と、石油化学用リアクターなどの反応器設計技術を生かし、高効率なメタネーション装置の開発に取り組んできた。現在、メタネーション設備の大型化や、海外でのe-メタンバリューチューン構築に向けた検討を行っている。今後はCO2からプラスチック原料である低級オレフィン製造技術や持続可能な航空燃料(Sustainable Aviation Fuel:SAF)(※6)の合成技術開発などを進めていき、CO2の有価転化技術の開発を通じてカーボンリサイクル事業の推進を図っていく。

※1:グリーン水素等の非化石エネルギー源を原料として製造された合成メタンに対して用いる呼称
※2:Front End Engineering and Designの略
※3:原料を装置に投入し、熱分解とともにそこに吹き込まれた高温の水蒸気と反応させてガス化。原料の一部は燃焼し、ガス化の熱源となる
※4:二酸化炭素の回収・貯留(Carbon dioxide Capture and Storage)
※5:バイオマス由来のCO2や大気中のCO2を貯留・固定化などすることで、正味としてマイナスのCO2排出量を達成すること
※6:持続可能な航空燃料。原料の生産・収集から、製造、燃焼までのライフサイクルでCO2排出量を従来燃料より大幅に削減し、既存のインフラをそのまま活用できる航空燃料として世界的に普及推進が活発になっている

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