遊星減速キャリア一体 「JTEKT Ultra Compact Diff」 を新たに開発…ジェイテクト

ジェイテクト(本社:愛知県刈谷市)は5月9日、電気自動車(BEV)市場の拡大を見据え、遊星減速キャリア一体「JTEKT Ultra Compact Diff(JUCD)」を新たに開発したことを発表した。
遊星減速キャリア一体JUCDは、遊星減速ピニオンギヤと遊星減速キャリア、超小型デフ「JUCD」を一体化したもの。同軸遊星式eAxleの更なる小型・軽量化とBEVの航続距離向上に貢献する。

デフ:自動車の旋回時など走行中に発生する左右輪の回転差を吸収しつつ、両輪と駆動源をつなぎトルク伝達を行う差動装置
遊星減速キャリア一体JUCDの開発経緯
自動車の電動化が進む中、インバーター、モーター、デフを含む減速機などを一体化させたeAxleと呼ばれる駆動システムの開発・採用が急激に拡大している。より良いBEV実現のためには、その駆動源の心臓部であるeAxleの小型・軽量化が求められている。
モーターとデフがオフセット配置される一般的な3軸式eAxleに対して、同軸式はeAxleの高さと前後寸法の小型化に有利でシェアの拡大が見込まれるという。
モーター軸に連結するサンギヤ、eAxleケースに固定するリングギヤ、それらとかみ合いトルクを分岐・合流させる複数の段付ピニオンギヤをもつ遊星減速式は、更なる減速機の小型化とピニオンギヤを含むキャリアとデフの一体化ができる。その一方、一般的なベベルギヤ式デフではキャリア機能との干渉を避けるため並列配置となり、幅寸法の抑制が課題だった。
同社は、2022年8月に従来のデフを超小型化したJUCDを開発した。今回、それを基に遊星減速キャリア一体JUCDを新たに開発。同軸遊星式eAxleの更なる小型・軽量化に貢献する。
開発品の特長
1. 高トルク密度JUCDとの融合により、遊星減速キャリア一体デフの幅狭化、小型・軽量化
通常のデフと同等の強度を確保しつつ、径と幅の両方で小型化が可能なJUCDの特長を活かしデフ外径を小径化。キャリア機能との干渉を回避しつつ、デフ幅も短縮してキャリアの幅寸法内にオーバーラップ配置させた。
出力150kW級のeAxle向けデフ単体としては、JUCDにより約25mmのデフ幅短縮効果がある。さらに遊星減速キャリアとJUCDを高度に融合させることで、通常のデフと組み合わせた遊星減速キャリアに対し、約50mmの幅寸法短縮と全体の小型・軽量化を可能とした。
また、デフハウジングを円筒形としてキャリア部と一体化し、トルク伝達時のハウジング変形・バラツキを抑制した。複数ある遊星減速ギヤの歯当たりバラツキを改善し、NV性能確保に有利としたという。
2.「JTEKT Ultra Compact Bearing」、「JTEKT Ultra Compact Seal」でさらに幅寸法を短縮
同軸式eAxleの玉軸受取付け箇所に、同社が開発した超幅狭軸受「JTEKT Ultra Compact Bearing (JUCB)」を採用した。さらに、シール部に幅短縮デフサイドシール「JTEKT Ultra Compact Seal(JUCS)」を取り付けることで、eAxle全体の幅寸法を一層短縮する。

3.高性能な遊星減速ピニオンギヤも供給可能
同社は、eAxleの小型・軽量化、高強度化、高効率化、低騒音化などのニーズに応えるため、2021年に歯車事業を立ち上げた。自動車部品・軸受・工作機械の各事業で培った解析技術やモノづくり技術を融合することで、独自の3D歯面修整加工技術を確立したという。高性能な遊星減速ピニオンギヤを、JUCDなどの軸受とともに遊星減速キャリア一体JUCDに組み付け、顧客に供給することも可能だという。
今後の展望

eAxle小型化ニーズの高い、高出力車や4WD車を中心に同軸式eAxleへの需要も大幅に伸びると見込まれている。代表的な出力150kWの同軸遊星式eAxleに、同社が開発した遊星減速キャリア一体JUCD、JUCB、JUCSを適用した場合、eAxleのユニット幅を約70mm短縮、重量を約7kg低減できると試算している。
参考
<BEVにおけるeAxle搭載位置と同軸遊星式eAxle、3軸式eAxleの構造>

<2022年8月31日 プレスリリース>
電動化に貢献するJTEKT Ultra Compact Diffを新開発
<2022年10月18日プレスリリース>
電動化に貢献する超幅狭軸受「JTEKT Ultra Compact Bearing」を新開発
<2022年10月24日プレスリリース>